アメリカ人は植物由来肉を食べなくなった…消費者の認知度アップが頼みの綱か

ソース: Business Insider / 画像: -Getty /著者: Jacob Zinkula原文] (翻訳:仲田文子、編集:井上俊彦)

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  • 2020年、植物由来肉産業は急成長した。

  • しかし今、ビヨンド・ミートやインポッシブル・フーズなどの企業は売上が鈍化し、レイオフが行われている。

  • これはインフレのせいばかりではなく、アメリカ人が植物由来の製品を求めなくなったのかもしれない。

植物由来肉は世界を変える勢いかと思われたこともあるが、もはやアメリカ人は買わなくなっている。

2020年、植物由来肉の小売売上高は45%増加し、初めて10億ドルの大台を突破した。ビヨンド・ミート(Beyond Meat)やインポッシブル・フーズ(Impossible Foods)といった企業の認知度が高まり、さらに気候変動や動物福祉への懸念もあって、多くのアメリカ人がフェイクミートを試してみようという気になったのだ。

また、パンデミックの影響も売上に貢献した。多くの消費者が、肉不足に直面する中、政府からの給付金を得て、単調な毎日を打破する新しい何かを探していたのだ。

しかし、この1年で状況は一変した。

小売データ分析を行うIRIによると、2022年12月時点でスーパーマーケットの冷蔵植物由来肉の売上は前年比14%減となった。また、11月の外食店での植物由来肉バーガーの注文は2019年の水準と比較して9%減少した。

2022年に株価が75%近く下落したビヨンド・ミートにとって、この売上減少が従業員の20%をレイオフした理由のひとつになっている。また、2022年10月に従業員の6%をレイオフしたインポッシブル・フーズは、さらに20%の人員削減を計画していると報じられている。

業界の苦戦の理由がインフレだけなら、それほど心配することはないだろう。グッドフード研究所(Good Food Institute)によると、植物由来肉は未だ従来の食肉の2倍から4倍の価格であることから、フェイクミートファンでも節約のために一時的に購入量を減らしただけという可能性もある。

しかし、この業界の問題はもっと深刻だと指摘する専門家もいる。

味や健康効果の怪しさが、消費者を遠ざけている

そもそも植物由来肉の顧客層が広がっているのかどうか、よく分かっていない。

ギャラップ(Gallup)が2018年に実施した世論調査によると、アメリカ人の5%がベジタリアンで、2012年は5%、2001年は6%と横ばいだった。一方、ビーガンの割合は2012年の2%から2018年には3%になった。2022年、ベジタリアン・リソース・グループ(Vegetarian Resource Group)は、アメリカ人口の6%がビーガンまたはベジタリアンであることを明らかにしたが、いくつかの調査では、その割合はもっと高い可能性があるとしている。

とはいえ、ベジタリアンが急増したようには見えないことから、2020年における植物由来肉の売上高急増は、肉食者「フレキシタリアン」(肉は食べるが消費を減らそうとしている人々)によってもたらされたと思われる。ただ、これらの人々は、さまざまな理由から植物由来肉にこだわらないことが多い。

「ごく一部の人にとってはすばらしい製品だが、ほとんどの消費者には売りにくい」と、エドワード・ジョーンズ(Edward Jones)の消費者調査アナリスト、ブライアン・ヤーブロー(Brian Yarbrough)は以前Insiderに語っていた

味という重要な問題については、多くのアメリカ人が植物由来肉には失望したと述べている。植物由来肉を本物に匹敵するものにしようとする業界の努力は負け戦だと考える専門家もいる。

消費者の食品選択を研究するオレゴン大学のマーケティング教授、ステフェン・ヤーン(Steffen Jahn)は「本物の肉を真似ることは、本物らしさの比較になる。『もうほぼ本物だ』と主張しても、『そうかもしれないが、本当の本物じゃない』と反論される」とワシントン・ポストに語っている

さらに、植物由来肉には環境面での利点がある一方で、従来の食肉と比較するとそれほど、あるいはまったく健康的でない可能性を示唆する研究が増えており、消費者はこの点を疑問視しはじめている

医師でNutritionFacts.orgの創設者であるマイケル・グレガー(Michael Greger)は「これらが健康食品であるという幻想を持ってはならない」とブルームバーグに語っている

このように業界には課題も多いが、楽観的でいられる理由もある。消費者の認識がまだ十分でないということだ。

2023年1月、インポッシブル・フーズのピーター・マクギネス(Peter McGuinness)CEOは、同社の製品を知っているアメリカの消費者は17%に過ぎないと主張し、今後新たな広告キャンペーンを展開していく予定だと述べた。今後10年の間に、植物由来製品の企業も味を改善し、価格を下げることができるようになるかもしれない。

また、実験室で動物の細胞から育てられた培養肉が成功する可能性もあるが、この技術革新もいくつかの障害に直面するかもしれない。