管理栄養士に聞いた!朝に避けたほうがよい食習慣
ソース: ELLE/ 画像: Getty Images/ 著者: 管理栄養士の櫻井麻衣子
朝はしっかり食べる派? それともコーヒーだけ? 野菜サラダやフルーツのみの朝食が体によいと思っている? よかれと思ったその思い込みが、その日のパフォーマンスに悪影響を与えるだけでなく、感情の不安定につながることも。そこで、管理栄養士の櫻井麻衣子さんに、避けたほうがよい朝食の習慣をAsk! パンやデニッシュ、スムージーを選ぶときのアドバイスもお届け。
#01 デニッシュやかつ丼など高脂質のものを食べる
避けた方がよいのは、高脂質のものです。食べ物の胃の停滞時間はその内容によって異なり、1.炭水化物 2.タンパク質 3.脂質の順に長くなります。脂質は胃の働きを抑制するため、腹持ちがよいというメリットがありますが、逆に胃もたれにもつながります。また胃に食べ物が入っている状態だと、消化のために内臓に血液の流れが集中し、脳に十分な血液が行き渡りません。脳が酸素不足になり頭がボーッとするなど、午前中のパフォーマンスの低下につながります。
#02 炭水化物や甘いものをいきなり食べる
食物繊維の豊富な野菜から食べる「ベジタブルファースト」や、タンパク質の豊富な肉から食べる「ミートファースト」は食後の血糖値の上昇を緩やかにするため、食べる順番を意識することは大切です。特に夕食から時間が空いての朝食前は血糖値が低い状態にあるため、朝食で甘いものや炭水化物だけをいきなり食べてしまうと血糖値が急上昇。血管壁を傷つけたり、食後の高血糖により頭が働きづらくなったり、さらには急上昇した血糖値がその反動で3時間ほど経ってから急降下し、強い空腹感やイライラなどの感情の不安定にもつながります。
そのため朝から脂質やタンパク質をほとんど含まない和菓子などで、軽く朝食を済ませた気分になるのは危険です。
#03 早食い
夕食から時間が空いている朝食は、特に胃に負担がかかるため、満腹やそれ以上食べると消化に時間がかかったり高血糖につながり、午前中のパフォーマンスの低下や低血糖のような症状につながりかねません。腹八分から九分目の量がおすすめです。
腹八分目にするためには、まず時間のない朝でもよく噛んで食べること。よく噛むことで満腹感が得られやすくなります。それから早食いだと、食べる速さと実際に脳が満腹だと感じるのにタイムラグが生まれてしまい、満腹以上、食べてしまったことに食べ終わってから気がつくことも。
#04 具のないおにぎりだけを食べる
パンやごはんといった炭水化物が中心になる場合、特にごはんの場合は血糖値が一気に上がるため、主菜や副菜を摂ることを意識しましょう。ごはんだけ、もしくはパンだけで考えた場合、パンのほうがGI値(血糖値を上昇させる値)が低い傾向にありますが、パンの場合でもサンドイッチなどにして主菜と副菜を摂ることが理想です。
ちなみに、デニッシュやホイップクリームたっぷりのパンケーキなどは高脂質、高糖質な傾向にありますが、どうしても食べたい場合には、おかずと一緒に食べてください。
#05 野菜サラダのみの朝食
フルーツやサラダを食べること自体は問題ありませんが、これからの寒い季節、サラダやくだもののみの食事では体が冷える傾向にあります。また食事をとることで血糖値が上がり、それにより脳は十分に働き始めますが、“サラダのみ”の食事では糖質が不足して血糖値が上がりづらい傾向にあります。血糖値は上がりすぎてもいけませんが、食事をしているのにほとんど上がらないのも問題です。
サラダを朝食にしたい時には温野菜のサラダにして豆腐などのタンパク質とじゃがいもやかぼちゃなど糖質の高い野菜を加えれば、サラダのワンボウルで朝食を完結することも可能。また、くだものを朝食のメインにしたいときには、ホットミルクとゆで卵も加えて栄養バランスを整え、体温を保持できるとよいでしょう。
#06 飲み物だけで済ませる
固形のものを食べて咀嚼することで唾液が分泌されます。けれど起床後、口が乾いた状態で固形物を食べないでいると唾液がしっかり分泌されず、口腔内の細菌が増殖しやすくなり口臭の原因になります。ただし、前日に食べすぎて胃がもたれているようなときにまで無理する必要はありません。
また、胃が弱く朝食が食べられない人は、胃での消化がよい脂質の少ないものをよく噛んで食べるとよいでしょう。
#07 起きがけに熱い飲み物を飲む
朝、温かいものを飲んだり食べたりすることは、体温が上昇しやすくなるのでおすすめですが、熱過ぎるものだと食道や胃への大きな負担になります。
口は熱さを感じますが、食道や胃はほとんど感じないため口の中さえ過ぎてしまえば何事もなかったように感じます。特に咀嚼時間のない飲み物は注意が必要です。
食事をし始めることで他の食べ物も胃に入ってくることと、胃粘液も分泌され始めるため、胃へのダメージは多少分散されますが、とくに朝いちばんの熱いものは注意が必要です。
#08 コーヒーだけ飲む
コーヒーに含まれるクロロゲン酸が胃酸の分泌を促進するため、コーヒーを飲むと胃の調子が悪くなる人がいます。それは胃酸により胃の粘膜が傷つけられることが原因のひとつ。
通常、消化を促す胃酸と胃を守る胃粘液はバランスよく分泌されていますが、特に朝の空腹時などに食事をせずにコーヒーを飲むと、胃酸だけが分泌されてしまい胃への負担が大きくなります。コーヒーを飲むときには、すぐに朝食をとることで胃粘液の分泌も促されるため、胃への負担を軽減できると考えられます。
#09 スポーツドリンクなどの清涼飲料水を飲む
清涼飲料水に多く含まれる果糖ブドウ糖液糖は非常に吸収の速い糖のため、普通の砂糖より血糖値を急上昇させます。朝食を食べる時間のない朝に、ビタミン等の栄養素が添加された清涼飲料水で糖分を補給するのはありがちですが、血糖値が急上昇することにより喉が渇きさらに清涼飲料水が欲しくなるという「ペットボトル症候群」といわれる悪循環になりかねません。そうすると高血糖に陥り、血管へのダメージだけでなく膵臓や肝臓への負担までもが大きくなる可能性があります。
【トリビア】起きてすぐに水を飲むのはよい?
大変よい習慣です。水は余計な成分を含まないので、体への負担が少ないまま、寝ている間に体から失われた水分を補うことができます。特に寒い季節は、少しぬるいと感じるくらいの白湯がおすすめです。
管理栄養士・櫻井麻衣子さん
Profile●総合病院で調理献立に携わった後、痩身外来にて栄養指導に従事する。その後2017年よりフリーランスの管理栄養士として料理教室、食事カウンセリング、レシピ開発など幅広く活動中。「妊娠中のラクうまごはん」「がんばりすぎない離乳食」(マイナビ出版)にて料理を監修。