タイで大麻食品ビジネスに続々と参入、異業種からも

ソース: Yahoo Japan / 画像: 日本食糧新聞社 / 著者: 小堀晋一

大麻草の活用研究を進める保健省傘下機関「CANNHEALTH INSTITUTE」のチラシ=提供写真(日本食糧新聞社)

大麻草の活用研究を進める保健省傘下機関「CANNHEALTH INSTITUTE」のチラシ=提供写真(日本食糧新聞社)

伝統的なハーブ(薬草)を使った食事や医療が現代に伝わるタイで、長らく禁止とされてきた大麻成分を添加した食品や医薬品の製品開発や販売が可能となった。今年1月に大麻草の栽培と加工・販売が認められ、3月にサプリメント(栄養補助食品)や飲料などへの添加が認可されたのだ。これを受け、民間では新規参入を目指す企業の動きが後を絶たない。エネルギーやアパレルといった異業種からの投資も相次いでいる。7億ドル(約710億円)とも試算されるタイの大麻ビジネス市場。政府の高付加価値産業化政策とも合致し、熱い視線が注がれている。 日本では大麻取締法で使用が禁止されてきた大麻だが、タイではアユタヤ王朝期(14~18世紀)に伝統薬としての利用が始まっている。数万種があるとされるハーブの1つの位置付けで、食品への添加も日常的に行われていた。ところが近年は麻薬汚染の余波を受け、政府が規制を強化。使用はおろか栽培さえも厳しい規制下に置かれていた。 ところが昨今、医療への大麻成分の利用が進み、大麻を解禁する国も増えたことからタイ政府も見直しを実施。2年前に大麻解禁を掲げた政党が与党入りしたこともあって一気に“自由化”が進むこととなった。第5種麻薬に指定されていた低麻薬成分の大麻草ヘンプが解除され、葉や茎などからの成分抽出が許された。これにより、保健省食品医薬品委員会(FDA)への申請を条件に、製品開発と販売が一気にスタートすることになった。 驚くのは、その関心の高さだ。従来の健康食品企業や化粧品企業などに加え、多種多彩な業種から参入が相次いでいる。給油所運営大手のPTGエナジーはコロナ禍で経営が悪化したことから、経営資源の分散を目指して進出を決めた。現在は4%しかない非石油事業を将来は60%にまで引き上げる方針だ。 タイ人に大人気の海苔菓子製造大手タオケーノイ・フード&マーケティングも事業の多角化の矛先を大麻成分入り製品の開発に求めた。海苔菓子市場の限界を念頭に、商品のラインアップを増やしていく方針だ。大手商社ロクスレーは大麻成分入りの芳香飲料を開発し、約4000ヵ所ある自社販売網に載せる計画。アパレルのFNファクトリーは店頭で大麻成分入りのサプリメントを販売する。 大麻成分はさまざまな食品に添加できることも参入を容易とさせている。サプリメントや栄養飲料などのほか、スナック菓子やシリアル食品などへの採用もすでに具体化されている。睡眠障害や不安を緩和するための機能性飲料としての製品化も進む見通しだ。 こうした進出熱は投資も呼び込もうとしている。すでに複数の投資会社がファンドの組成に関心を示している。海外の富裕層をターゲットとした医療ツアーの検討も始まっている。(バンコク=ジャーナリスト・小堀晋一)