輸入食品の安全性は?国内品との違いや検査方法・基準も解説
ソース: Foods Channel / 画像: - /著者: Foods Channel
日本では野菜や果物、肉や魚といった生鮮食品を始め、ハムや菓子、加工食品などさまざまな食品が輸入されており、輸入食品なくして日本の食生活は成り立たないと言われている。
一方で、輸入食品の安全性が気になるという人は32%となり、輸入食品の安全面に対して「不安がある」と考える消費者動向は、ここ数年間で30%台を推移している。この記事では、輸入食品と国内製造品との違いや、世界的な食糧需要、輸入食品の検査基準・安全性などについて解説する。
参照:日本政策金融公庫「消費者動向調査(令和5年1月調査)」
輸入食品とは?輸入時の届出件数と内訳
輸入食品とは、「外国から日本に持ち込まれた全ての食品」のこと。肉や魚、野菜、果物、飲み物、加工食品に使用される原材料や香辛料など、様々なものが含まれる。販売または営業上使用することを目的とした輸入食品は輸入の都度検疫所に届け出ることが義務付けられており、届出件数は増加傾向にある。
輸入食品のメリットとデメリット
それでは、輸入食品にはどのようなメリットとデメリットがあるのだろうか、注意点も踏まえて解説する。
輸入食品のメリットは?
輸入食品のメリットには以下が挙げられる。
また近年ではTwitterやインスタグラム、YouTubeなどSNSを通じて世界各地の食品の情報が手に入りやすくなった。そのため話題のお菓子や、海外で人気の料理の食材を輸入することにより、消費者は日本でも様々な国の料理を楽しむことができる。
また、食品事業者にとってもビジネスの点において、希少性による飲食店経営や食品事業の差別化を図ることができる。
輸入食品のデメリットは?
輸入食品のデメリットには以下が挙げられる。
国内で生産された農作物や商品が、海外から安く輸入された商品により売れなくなり、結果、食物自給率が下がってしまう。
さらに輸入には為替の変動によるリスクは不可避であり、輸入食品に頼ってしまっていると販売価格の不安定を引き起こしてしまう可能性がある。現に急激に円安が進行しており、仕入れを輸入に頼る産業はさらなる苦境に追い込まれている。
輸入時にはさまざまな環境負荷がかかっていることもデメリットの一つといえる。輸入食品は船や飛行機を使って輸送されるが、大量の燃料が利用されるため国内品の輸送と比べると二酸化炭素の排出量が増加してしまう。
また、輸入食品の梱包に使用される包装材も環境負荷につながる。環境に配慮している事業者は気を付けたいポイントだ。
世界的な食料需要の増加、食糧の安定供給、輸入のリスク
一般社団法人産業環境管理協会 資源・リサイクル促進センターの「世界の食糧生産」によると、世界の穀物の需要に関しては、1960年から2015年の50年間で需要量が約3倍にも増加しており、世界的な食糧需要は増加傾向にあるといえる。
また、世界全体の食糧需要量は2005年、2007年と比較して2050年には穀物が1.5倍、畜産物が1.7倍になるとの結果が出ており、世界的な食用需要は今後もさらに増加していくと考えられる。
参照:一般社団法人産業環境管理協会 資源・リサイクル促進センター「世界の食糧生産」
農林水産省の「食料自給率って低いと良くないの?」によると、日本の食料自給率は38%(令和元年度、カロリーベース)であった。
日本の食料のうち62%は輸入に頼っていることから、世界情勢によるリスクは他国以上に高いといえる。生産量の多いものは輸入により安定供給されやすいといえども、例えば、異常気象や自然災害、家畜疾病の流行、感染症や戦争などで共有が不安定になった場合は、日本は大きな影響を受けてしまう。
輸入食品の検査基準と輸入までの流れ
国によって気候風土、病害虫の種類が異なるため、輸入食品に使われる農薬や添加物、動物用医薬品にも違いがあるのではと考える人もいるかもしれない。
しかし、海外から日本へ輸出する食品に対しては、日本の基準を満たすような農薬を使うように制度が定められており、検査も実施されている。
輸入食品が輸入されるまでの対策には、「輸出国対策」「輸入時対策」「国内対策」の3つの流れがある。
参照:消費者庁「輸入食品」
輸入食品の輸出国での対策
食品の輸出国での対策としては、輸出国政府によって以下3つが行われている。
また、厚生労働省では必要に応じて専門家を輸出国に派遣し、安全管理状況の確認や日本の食品安全規制についてセミナーを開催するなどの対応をしている。そのほか、大使館を通じた日本の法制度の英語での周知や輸出国での検査に関する技術協力も行っている。
参照:厚生労働省「輸出国から連絡のあった衛生証明書」
輸入食品の輸入時の対策
国内での輸入時の対策としては、輸入者の輸入届出の提出が挙げられる。厚生労働省の検閲所にて届出内容の確認がなされ、食品衛生法規格基準に適合したものであるかを審査されるのだ。審査により違反の可能性があると判断されると、輸入食品監視指導計画に基づきモニタリング検査や検査命令などが行われる。
輸入時の届出の確認とモニタリングの工程を経て合格が得られたもののみ輸入食品として販売が許される。不合格になった食品は破棄・積戻し(輸入した貨物を再び外国に送り出すこと)、食用外転用(飼料に転用する)となる。
輸入食品の国内での対策
国内対策としては、輸入時の水際対策としての検査も実施されている。都道府県等監視指導計画に基づき、輸入食品が食品衛生法に基づく規格基準等に適合するものであるか、食品衛生監視員が審査を行う。
その際に違反が発見された場合には通報し、違反情報は輸出国対策、輸入時対策、国内対策の流れの中で共有される仕組みとなっている。
輸入食品の安全性
上記のように、輸入食品は届出の必須や国内製造品と同じ基準で検査を経て輸入されている。厚生労働省の「輸入食品監視業務FAQ」によると、全輸出国による食品衛生法違反率は0.03%としている。
参照:厚生労働省「輸入食品監視業務FAQ」
また、東京都が発表した「令和2年度違反調査結果」によれば、国産食品の違反率は0.03%、輸入食品の違反率は0.06%であり、国産食品と比べて輸入食品の違反率が特に高いわけではない。この結果から見ても、輸入食品必ずしも危険とは言い切れない。
参照:東京都福祉保健局「令和2年度違反調査結果」
輸入食品と国内製造品を用途に応じて使う
日本において、輸入食品の輸入重量は横ばいであるが、届出件数は増え続けており、食料自給率の低い日本にとっては、輸入食品は欠かせない存在だ。食品の輸入までには、厚生労働大臣への輸入届出の提出や、数々の検査が必要なため、安全性は高いといえる。しかし、管理方法が間違っていれば安全が損なわれてしまう可能性もあるだろう。
輸入食品か国内製造品かを問わず食品は安全に消費者に届くよう制度付けられているが、今一度自社で取り扱っている輸入商品について確認し、管理していこう。