健康食品・サプリメントと薬 リスクがある「飲み合わせ」リスト
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「抗血小板薬のアスピリンを服用中の60代男性患者に胃カメラで組織の一部を採取する生体検査を行なった際、出血がダラダラと止まらなくなりました。抗血小板薬を服用中でも、生検程度でいつまでも出血が続くことはありません。不思議に思って患者さんによく聞いてみると、『イワシのサプリを飲んでいる』と言われたのです」
そう語るのは、国際医療福祉大学病院内科学・予防医学センター教授の一石英一郎医師。この男性患者に何が起きたのか。 「イワシのサプリに含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)と抗血小板薬を併用すると、血をサラサラにする作用が増強され、出血のリスクが高まります。男性の出血が止まらなくなったのは、サプリとの併用が原因と推定できました」(一石医師) コンビニやドラッグストア、通販などで手軽に購入できる健康食品、サプリメント(錠剤やカプセル状または粉状のもの。以下サプリ)が人気だ。内閣府のアンケート調査(2012年)では、体調維持や健康増進目的で健康食品を利用する人は高齢になるほど多く、利用者全体の約5割(ほぼ毎日摂取する人の約7割)が2種類以上のサプリを併用していた。 その一方で、生活習慣病リスクが高まる中高年になると、「多剤処方」の問題が顕著になる。 厚労省の統計によると、1レセプト(診療報酬明細書)あたりの平均使用薬剤数が3.7種類(院外処方)のところ、75歳以上では、5種類以上処方された人が40.7%に上っている(2020年6月)。 薬もサプリも決められた用法・用量、1日の目安量などを守れば、それ単体では体調を改善してくれるものだ。問題は「飲み合わせ」にある。 例えば「薬」と「薬」では、併用することで効能・効果が増強、または弱まる組み合わせがあるため、薬の添付文書には「併用禁忌」「併用注意」の組み合わせが必ず記載される。 一方、サプリはどうか。 「“健康食品は摂取するほど健康になる”という誤解は非常に恐ろしい」と語るのは、日本健康食品・サプリメント情報センターの宇野文博理事だ。 「サプリや健康食品が身体に効く=作用しているのであれば、服用している医薬品との相互作用を考える必要があります。しかし、日本では医薬品との相互作用について細かくチェックできていないのが現状です」
前出・一石医師が言う。 「服用中のサプリについて詳しく聞く医師が少ないうえ、自己申告する患者さんも非常に少ないです。EPAと抗血小板薬を併用していた患者さんは『サプリは食品だから言う必要はない』と思っていたそうです。あるいは『医師が処方する薬に不満があってサプリを飲んでいる』と思われたくないのかもしれません」 そうした患者の考え方がさらなる薬の処方を招き、「多剤併用」が進む悪循環にもなりかねない。 「医師が患者さんのサプリによって薬の効果が減弱している可能性を把握しないまま『薬が効かないから』と降圧剤や糖尿病治療薬の処方を増やし、多剤併用に繋がることは十分あり得ます。サプリの利用者が増えた今、医師だけでなく患者さん自身も薬との飲み合わせにより注意すべきです」(一石医師) 具体的にどのような「危険な組み合わせ」があるのか。本誌・週刊ポストは日本健康食品・サプリメント情報センターが編集、日本医師会・日本薬剤師会などが監修した『健康食品・サプリメントと医薬品との相互作用事典』から、薬剤師の長澤育弘氏(銀座薬局代表)監修のもと、組み合わせと、その危険度(高・中・低)の一覧表を作成した。 「事典の出典は米国の健康食品・サプリメント等データベース『natural medicines』の日本対応版(書籍・オンラインで有料公開)で、これは約1200種類の健康食品やサプリメントの素材・成分の有効性、安全性、医薬品との相互作用などの科学的根拠について、学術誌掲載の研究論文をもとに統計的に評価されているものです」