0からまるわかり、親子で知りたい、私たちが毎日使うパーム油のこと

ソース: House E-mag / 画像: House E-mag / 著者: House E-mag

私たちは「パーム油」を毎日のように食べたり使ったりしています。そう聞いても、「パーム油って何?」と疑問に思う人が大半でしょう。実はパーム油は加工されて、子どもたちが大好きなスナック菓子やパンをはじめいろんな食品に含まれたり、洗剤やシャンプーにも利用されるなど、私たちの暮らしとは切り離せない油になっています。そんな身近なパーム油、生産国では数々の問題を抱え、大規模な森林破壊の原因になるなど、「便利だから使う」では済まない状況になっています。そうした地球規模の問題に対し、どう対処すればいいのか、私たちができることを親子で知っておきましょう。

パーム油は食品や日用品などいろいろ使えて便利

パーム油はアブラヤシの実をしぼってつくられる油で、世界で最も多く使われている植物油といわれています。2017-2018年の世界の植物油生産量では、その約1/3をパーム油が占めるほどです。また、パーム油の生産国はインドネシア、マレーシアが中心で、生産量の85%がこの2カ国で生産されているのですから驚きですね(※1)。

パーム油はアブラヤシの実をしぼってつくられる油で、世界で最も多く使われている植物油といわれています。2017-2018年の世界の植物油生産量では、その約1/3をパーム油が占めるほどです。また、パーム油の生産国はインドネシア、マレーシアが中心で、生産量の85%がこの2カ国で生産されているのですから驚きですね(※1)。

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パーム油の生産から小売りまでの一般的な流れ

日本人は「塩分の摂りすぎ」であることが国内外から指摘されています。ご存知の通り、日本では高血圧や胃がんになる人の割合が高く、これは塩分の摂りすぎが原因だといわれているのです。

ただ、パーム油は単に植物油や植物油脂と表記されることも多く、私たちがその名前を目にする機会はあまりありません。先ほどお伝えしたようにいろんな食品の材料としても幅広く利用されています。また、口の中でとろけるような食感を生み出したり、インスタント麺やスナック菓子の揚げ油として使われたりと、さまざまな使い方ができる特性を持っています。

このほか洗剤やシャンプー、口紅、塗料、歯磨きペーストなどにも使われ、最近ではバイオマス発電(再生可能な生物由来の有機性資源で、化石資源を除いた資源による発電)の材料としても注目されています。

日本では、植物油の国内供給量は1970年代まで大豆油が中心で、1980年代には菜種油が主役となりました。これらは現在も料理用の油などに使われています。パーム油を中心とした熱帯油脂の国内供給量は当初わずかでしたが、1990年代に輸入が増加し、現在は30%近くにまで増えているんです(※1)。

※1 一般社団法人 日本植物油協会HP「植物油の基礎知識」より。2017-2018年の世界の植物油の生産量2億169万トンのうち、パーム油が7,150万トンで1位。また2019年の日本の油種別植物油供給量278万7000トンのうちパーム油は77万9000トン。

需要増が続くパーム油。生産国で起きている数々の問題とは?

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パーム油のもとになるアブラヤシは高温多湿の熱帯地域で育ち、1年を通して実をつけるなど、効率よく育てられるのが特色の一つ。このためほかの植物油より安価で、年間を通じて安定供給できるメリットもあります。しかもパーム油はすでに紹介した通りさまざまな用途に使えるため世界的に需要が高まり、それに応えて供給量も10年足らずで1.5倍以上に急増したのです(※2)。

しかしそれらを主につくっているのはインドネシアとマレーシアという2つの国に過ぎません。このため現地のアブラヤシ農園では生産・加工の段階で、さまざまな問題を抱えるようになっています。

例えば、両国では供給量を増やすため、長い年月をかけて成長してきた熱帯林を伐採し、アブラヤシ農園に大規模転換する開発が急ピッチで進んでいます。日本より少し広い面積を持つインドネシアのスマトラ島は、世界有数のパーム油の生産地になりました。

WWF(世界自然保護基金)によれば、約30年でこの島の森林面積は約56%減少し、熱帯林や熱帯林に隣接して広がる泥炭湿地林の伐採も行われているといいます(※2)。

さらにWWFは森林火災・泥炭火災も問題視しています。森林伐採とともに、農園造成の下地づくりのために火入れ(現地では禁止されている行為)が行われ、この火が周囲の泥炭に延焼。二酸化炭素の貯蔵庫ともいわれる泥炭から多量の二酸化炭素が放出され、地球の温室効果を高める懸念もあるそうです。

【考えてみよう】(解答はページの一番下を見てね)

Q.便利でインドネシアやマレーシアの産業を支えるパーム油。熱帯雨林の伐採以外にもさまざまな環境への負荷があるなどとても難しい問題と言われています。さらに環境以外にも抱えている問題が、一体どのようなものでしょうか?考えてみましょう。

※2 一般社団法人 日本植物油協会HP「植物油の基礎知識」より。パーム油の国別生産量の推移では、2010-2011年で4,951万5000トン、2018-2019年(見込み)で7,544万6000トン

※3 WWF『持続可能なパーム油の調達とRSPO第2版』より。スマトラ島の森林面積は1985年に2,490万ヘクタール、2016年に1,110万ヘクタールと約56%減少

持続可能な手段で生産されたパーム油を選ぶ大切さ

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私たちが日々使っているパーム油はとても便利な半面、多くの問題も抱えています。とはいえ、パーム油を使わないようにすれば問題が解決するとは限りません。

もし企業や私たちがパーム油でなくほかの植物油を選ぶようになったら、パーム油の生産・加工・輸出を主要な産業とする生産国の経済に深刻なダメージを与え、働く場所もなくなってしまうでしょう。

それに切り替えた植物油が、アブラヤシと同じような問題を抱えていないとは言い切れません。例えばヒマワリ油にしても、アブラヤシを育てるよりもっと広い土地が必要になるはずで、やはり環境にある程度影響を与える可能性があります。

重要なのはパーム油をまったく使わないことではなく、私たちや企業がパーム油の使用を適切に抑えるよう工夫する一方で、生産国でパーム油が抱えるさまざまな問題を解決できる生産・加工方法に切り替えてもらうなど、お互いが協力し合うことです。

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商品のライフサイクルを考慮して、買う物を決める

こうしたパーム油の持続可能性をはじめ、環境や人々の暮らしに配慮しながら経済をうまく発展させていくのは、とても難しい問題です。ただそうした中で、私たちにできる行動の一つに「新しい基準で商品を選んで買う」ことがあります。

新しい基準とは、店頭に置かれた商品の一生(ライフサイクル)を考えた選び方のこと。例えば、その商品はどれだけ環境や人々の暮らしに配慮してつくられ、使っている間の省エネ性能はとれくらいで、使った後は環境に大きな負担をかけずに廃棄できるのか……などなど。単に性能や価格だけを比べるのではなく、自分がどちらの商品を望ましいと思い、つくっている企業を応援したいと思うか、といった視点で商品を選ぶことは普及を後押しすることにつながります。

RSPO認証の商品は認証ハードルが高く、普及にはまだ時間がかかりそうであったり、店頭ですべての情報を知るのは難しいですが、「このパッケージに印刷されたRSPO認証マークって何だろう?」など、いろんな認証マークを見かけたら疑問を持って調べることで、持続可能な社会に役立つ商品選びの知識が少しずつ増えていくはず。親子で身近な商品を調べて、その選び方を一緒に考えてみるのはどうでしょうか。

A 【考えてみよう】
先住民や地域住民の同意を得ず、開発者が一方的に開発を進め、土地の紛争が起きてしまったり、農園では労働者が健康や労働安全に配慮されない環境、安い賃金で働かされているなど、人と人の問題も指摘されています。しかし、現地の人は(輸入国も)経済に大きな利益があります。本当に解決が難しい問題なんです。