糖尿病の人は「超加工食品」にご注意 食事も多様性が大切 地球環境にも悪影響
ソース: dm-net / 画像: - / 著者: dm-net
ジャンクフードなどの超加工食品の消費は、世界的に拡大している。
超加工食品の多くは高カロリーで、脂肪・食塩などの過剰摂取にもつながりやすい。高血圧・糖尿病・肥満などのリスクが上昇するという研究が発表されている。
超加工食品の消費拡大は、植物の生物多様性にも悪影響をおよぼし、人間と地球の健康を脅かしているという報告も発表された。
超加工食品の多くは高カロリー
米国糖尿病学会(ADA)によると、超加工食品とは「糖分や塩分、脂肪を多く含む加工済みの食品。硬化油・添加糖・香味料・乳化剤・保存料など添加物を加え、工業的な過程を経て作られる、常温で保存できたり、日持ちを良くしてある食品」のことだ。
超加工食品は、▼スナック菓子、▼菓子パン・総菜パン、▼カップ麺、▼ピザ・ホットドッグ、▼ケーキ・クッキー・ビスケット・パイ、▼ミルクシェイク・カスタード、▼ドーナツ・マフィン、▼ミートボール・チキンナゲット、▼清涼飲料や炭酸飲料――などがある。
「超加工食品の多くは栄養価が低く、高カロリーです。食べ過ぎると、高血圧・糖尿病・脂質異常症・肥満などの慢性疾患のリスクが上昇することと関連していると考えられます」と、米ニューヨーク大学公衆衛生学部のフィリッパ ジュル氏は言う。
「米国では過去20年間で、超加工食品の消費量が増えています。米国人の平均的な食事スタイルは、この20年間で加工された食品に偏ってきました」としている。
コロナ禍で超加工食品の利用はさらに増加
「工業的な過程を経て作られる超加工食品の多くは低価格で、色・味・香りなどの嗜好性を高めてあります。多くの食品は、加工・処理する過程で栄養素が低下しており、高カロリーで、脂肪・食塩などの過剰摂取にもつながりやすいのです」と、ジュル氏は言う。
「栄養学の研究や調査の多くは、食品に含まれる栄養素の量に焦点をあてており、超加工食品の健康への影響についてはあまり調べてきませんでした」としている。
さらに、新型コロナの拡大により、感染対策のために行動が制限され、多くの人は自宅で過ごす時間を増やしている。コロナ禍が、栄養価が低く常温で保存できる超加工食品の消費の増加に拍車をかけている可能性がある。
「新型コロナのパンデミックの初期には、人々は買い物の頻度を減らすために食品の選択を変え、箱入りのマカロニやチーズ、缶詰のスープ、スナック食品といった超加工食品の売上が大幅に増加しました。食事スタイルを健康的な方向に戻していく必要があります」。
不健康な超加工食品の食べ過ぎにより、高血圧・糖尿病・肥満などの慢性疾患のリスクが上昇することを示した報告は増えている。
今後は、食事ガイドラインを改訂したり、超加工食品のパッケージラベルの変更、販売制限などに加えて、人々がより健康的な食品を購入しやすい環境づくりも必要だとしている。
健康に良い「ホールフード」の消費は減っている
ニューヨーク大学などの研究グループは、米国国民健康栄養調査(NHANES)に参加した、約4万1,000人の成人の過去24時間の食事データを分析し、食品を次の4つのカテゴリーに分類した。
(1) 野菜・果物・穀物・肉・乳製品などの加工が最小限の食品(ホールフード)
(2) オリーブオイル・バター・塩・砂糖などで加工された食品
(3) チーズ・魚や豆の缶詰などの加工食品
(4) 冷凍ピザ・炭酸飲料・ファストフード・お菓子・塩を加えたスナック・缶詰のスープ・朝食用シリアルなどの超加工食品
「ホールフード」を一言で説明すると、「食品をなるべく加工しないで、まるごと食べる」こと。野菜・全粒穀物・イモ類・大豆・豆類・ナッツ類・果物・乳製品などが挙げられる。
分析した結果、超加工食品の摂取量は、2001~2002年は全カロリーの53.5%を占めていたのが、2017~2018年には57%に増加した。それに対して、健康に良いとされるホールフードの摂取量は全カロリーの32.7%から27.4%に減少した。とくに肉や乳製品の摂取量が減っている。
60歳以上の高齢者はとくに、超加工食品の摂取が急激に増えている。高齢者は調査のはじめ頃はホールフードをよく食べていたが、年を追うごとに超加工食品を多く食べるようになった。
超加工食品は「生物多様性」にも悪影響をおよぼしている
ブラジルのサンパウロ大学などが発表した別の研究によると、ジャンクフードなどの超加工食品の消費拡大は、植物の生物多様性にも悪影響をおよぼし、人間と地球の健康を脅かしている。
超加工食品の消費は、世界のほぼすべての国や地域で増えており、高・中所得の国や低所得の国でも急速に増えているという。
「超加工食品の消費拡大は、農業や生物多様性にも影響を及ぼしています。こうした食品の製造や農業で直接的・間接的に使用される、動物・植物・微生物の多様性が損なわれているおそれがあります」と、同大学公衆衛生学部栄養・健康研究センターのカルロス アウグスト モンテイロ教授は言う。
ブラジル・米国・オーストラリアの栄養学の専門家が集まり、この問題について調査した結果、人類が食用に利用している植物は7,000種類以上あるものの、全エネルギー摂取量の90%は、わずか15種類の作物で供給されていることが分かった。
さらに、世界の40億人以上の人は、米・小麦・トウモロコシの3つの作物だけに依存しているという。
食品を選ぶときには地球環境への影響についても配慮
「世界の多くの人は、食事の多様性が失われ、バランスのとれた健康的な食事に必要なホールフードを食べなくなり、超加工食品を多く利用するようになりました」。
「その結果、世界の食料システムで生物多様性の低下が引き起こされ、生物圏のプロセスと生態系が破壊され、健康的で回復力のある持続可能な食料システムに障壁がもたらされています」と、モンテイロ教授は警告している。
超加工食品が人間の健康に及ぼす悪影響についての報告は増えているものの、地球環境に対する悪影響についての認識はまだ低い。
今後、開催されるフードシステムフォーラムや、生物多様性条約や気候変動などについての会議では、超加工食品によって引き起こされる農業・生物多様性の破壊についても議論し、悪影響を減らすための政策と行動について話し合う必要があるとしている。