「ペットボトル症候群」って知っている? 暑くなる季節の前に知っておきたい、2~5歳の子どもに気をつけたい飲み物

ソース: Benesse / 画像: Getty Images /著者: 中澤夕美恵 たまひよONLINE編集部 監修: 伊藤明子先生

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暑い時期や運動中の水分補給に役立つスポーツドリンク。子どもに飲ませすぎてはいませんか? スポーツドリンクやジュースなどを飲み過ぎると、のどがますますかわいたり具合いを悪くしたりすることが。こうした症状は「ペットボトル症候群」と称され、糖分の過剰摂取が原因で引き起こされます。意外と知らない「甘いもの」の落とし穴について、『医師が教える 子どもの食事50の基本』の著者である小児科医の伊藤明子先生が詳しく解説。2~5歳ごろの子どものおやつや食習慣を見直すヒントにしましょう。

甘い飲み物を大量に飲むのはNG!意識障害の恐れも

―「ペットボトル症候群」とはどんな症状でしょうか?

伊藤先生(以下敬称略) 「ペットボトル症候群」は正式には「清涼飲料水ケトーシス」といいます。スポーツドリンクなどの糖質を多く含む飲料を大量に飲むことで、血糖値が急激に高くなり、糖尿病が悪化したような状態になってしまうことを言います。

のどのかわき、多量の尿、吐きけ、だるさといった症状が起こり、最悪のケースだと意識障害を起こして倒れてしまうこともあります。

目安として大人が1カ月以上毎日1.5リットル以上、甘い飲料を飲んだ場合に「ペットボトル症候群」が起きることが報告されています。大人に比べて体重が軽い子どもは、より少ない量でも「ペットボトル症候群」になる可能性があるので、注意が必要です。

一般的なスポーツドリンク500ミリリットルの中には約30~40グラム(大さじ約3~4杯)の糖が含まれているので、大人でも運動中に飲む場合は水で薄めることをすすめています。水や麦茶もありますが、運動中に飲む場合、水や麦茶には電解質ミネラルがたりないのが難点。糖分が気になるのであれば、経口補水液を薄めてもいいです。

運動中ではなく、日常の水分補充であれば、子どもも大人も水や麦茶で十分です。

スポーツドリンクだけでなく、甘い炭酸飲料や清涼飲料水にはさらに多量の糖が使われています。できれば子どもには飲ませず、大人であっても毎日飲むのは避けたほうがいいででしょう。

どんな糖が使われているのかラベルで確認を

――子ども用の甘い飲み物はたくさんあります。糖分をとりすぎないようにするためには、何をチェックすればいいでしょうか?

伊藤 清涼飲料水に限らず、お菓子やアイスクリームなども、パッケージ裏の原材料を見てみてください。「果糖ぶどう糖液糖」などの果糖の表示はありませんか? これは「異性果糖(いせいかとう)」と呼ばれるもので、砂糖に比べ、少量でもしっかり甘味が感じられる性質があります。ここに含まれる果糖は体内で過剰な糖として変換され、肥満や脂肪肝の原因になることが報告されています。

日本の子どもの約5%が脂肪肝というデータもあります(※1)。脂肪肝になりやすい背景には肥満や糖尿病が考えられるので、甘いもののとり過ぎには注意が必要です。

――小学生高学年になると、炭酸飲料やエナジードリンクを飲み始める子もいます。できれば飲ませないほうがいいでしょうか?

伊藤 炭酸飲料は糖がかなり多いこと、種類によってはカフェインも含まれていることから、子どもには飲ませる必要はないと思います。大人であっても毎日飲むのは避け、たまに楽しむ程度に。さらにカフェインが多量に入っているエナジードリンクは中毒性が高いので、子どもには無論飲ませませんが、大人も過剰摂取には気をつけてください。実際にエナジードリンクが原因でカフェイン中毒を起こして死亡する例が報告されています。

――甘いものではありませんが、著書では牛乳の飲み過ぎのデメリットについても記されています。

伊藤 牛乳はタンパク質やカルシウムなどの栄養が豊富なので、適度に飲む分にはいいでしょう。ただ、牛乳は鉄の吸収を阻害してしまうので、たくさん飲むと鉄が不足する「牛乳貧血」になることがあります(※2~5)。牛乳は1日200ミリリットルくらいまでを目安にし、2杯以上飲みたい場合は、牛乳の代わりに最近注目されている植物性のミルクを取り入れるのも手です。アーモンドが原料のアーモンドミルクや、オーツ麦などの穀類が原料のオーツミルクを活用するといいでしょう。

とくに日本人は牛乳を飲み始めたのが江戸末期と歴史が浅く、欧米人に比べて、牛乳に含まれる乳糖を分解する酵素を持っていなかったり働きが弱かったりする人の割合が多いです。牛乳を飲むとおなかの調子が悪くなる場合は、無理に飲む必要はありません。

「甘いもの」をやめるには「見ない・買わない・持ち込まない」

――著書の中ではジュースに限らず、子どもの体のためには「甘いもの」の習慣をなるべく減らしたほうがいいとあります。甘いおやつはクセになってしまうということでしょうか。

伊藤 世界保健機関(WHO)では、1日に摂取する砂糖の量は25グラム(小さじ約6杯まで)としています。ジュースやお菓子をおやつの時間に摂取していると、この量を守るのは難しいでしょう。

さらに甘いものは食べるたびに「満足する度合い(閾値)」が上がるという特徴があります。甘いものを習慣化すると、閾値(いきち)が上昇して際限なく食べたくなってしまうので、食べる頻度を減らしてあげるといいでしょう。

――子どもに甘いお菓子をやめさせるのはなかなか難しそうですが、方法はありますか?

伊藤 2歳以上で会話である程度コミュニケーションがとれる年代なら、頭ごなしに食べてはダメ、と伝えるのではなく、子どもになぜ食べないほうがいいのかを説明しましょう。「甘いものばかり食べていると体が強くなれないんだって。だからやめようね」など、小さくてもきちんと話せば理解するものです。

その上で、おすすめしているのは「見ない、買わない、持ち込まない」の三原則。「〇月〇日から甘いお菓子を食べるのをやめよう」と張り紙をして、イベントのように取り組む方法も。一度甘いものをやめる、と決めたら自宅にはお菓子、ジュースは置かないようにしましょう。スーパーに行ってもお菓子売り場の前は通らないようにするなどの工夫も必要です。

一貫性がないとうまくいかないので、ママやパパも一緒に甘いものをやめます。例外をつくらないように、祖父母にも説明して、協力をあおぐといいでしょう。最初は食べたがるかもしれませんが、だいたい3週間くらいで慣れてくることが多いです。

――甘いお菓子の代わりに、どんなおやつを与えるといいでしょうか?

伊藤 おやつは「補食」と考え、不足しがちな栄養を補うようにしましょう。食物繊維補給ならふかしいも、野菜スティック、タンパク質をプラスしたいのなら味つけ卵、高野豆腐で作った軽食がおすすめです。