腸によくないとわかっていても…我慢したくないときは「食べる時間」の見直しを
ソース: wotopi / 画像: - / 著者: 内藤裕二
6月30日(木)に「fracora(フラコラ)」が主催する「生命科学アカデミー」が配信されました。今回のテーマは、腸内環境。
健康長寿の秘訣ともいわれる「腸内細菌」について、腸内微生物・消化器・抗加齢医学を専門とする内藤裕二先生に徹底解説していただきました。
「腸内環境を整えるメリットは?」「どうやって整えていけばいい?」など、生命科学アカデミーのHIROCO学長のトークを交えながら、リポート形式で詳しく紹介します。
※本記事は「生命科学アカデミー」で配信された内容を、ウートピ編集部で再編集したものです。
食べ過ぎ注意! 気をつけるべき食べもの3つ
——腸内環境を守るためには、日頃どんなことを心がければよいでしょうか?
内藤:それは非常によく聞かれる質問です。本題に入る前に、まず私が考える「食べすぎてはいけないもの」を3つご紹介します。1つ目は、動物性脂肪です。これは以前から何度もお伝えしていることですが、やはり動物性脂肪は腸内環境に大きな影響を与える食べ物の一つです。
2つ目は、砂糖や果糖などのいわゆる純粋な糖分です。おやつとしてりんごを食べる分には問題ないのですが、濃縮還元のりんごジュースには多量の果糖が入っています。りんごそのものを食べている限りはそれほど多量にはなりませんが、ジュースだとつい、ごくごくと飲んでしまいますよね。個人的には、砂糖果糖を制限する必要があるのではないか、と思っているほどです。
3つ目は、塩分です。以前から、高血圧に悩む人には塩分制限が必要だと言われていましたが、個人差があり、同じように塩分制限をしても効果が異なりました。その原因を追求したところ、塩分を必要以上に摂取すると、その塩分によって乳酸菌などの菌が腸からいなくなってしまうことがわかったのです。これは、腸内細菌に塩分が多大な影響を与えているという大発見でした。
塩分制限、糖分制限、動物性脂肪食制限。この3つを心がけたうえで余裕があれば、日常生活のなかに運動を取り入れてみてください。毎日ジムへ通って走るなど、ハードな運動をしなければならないわけではありません。
出勤前に隣の駅から歩く、家に帰る前に少し散歩をする、一週間に1回〜2回、汗をかくようなスポーツを楽しむなど、日常的な運動を心がけましょう。
食物繊維を増やそう!麦ごはん、根菜、豆など……
内藤:腸内環境を考えて食生活を変えるなら、日々の食事に食物繊維を取り入れてみてください。我が家では、白いご飯は1週間に1回。それ以外の日は、麦ごはんや玄米、古代米などを味わい楽しんでいます。パンを食べる場合は、全粒穀類を使った黒いパンがおすすめです。
また習慣的に野菜を食べるなら、葉野菜を使ったサラダより、根菜類や豆類などさまざまな種類を使ったおかずがおすすめです。以前ご紹介したように、豆乳やバナナを使ったスムージーに粉末状の食物繊維を5g混ぜるのもよいでしょう。
どうしてもハンバーガーを食べたいときは?
内藤:ときには、肉汁がしたたるようなハンバーガーを食べたい日もありますよね。そんなとき参考にしていただきたいのが、「時間栄養学」と呼ばれる研究です。この研究によって、例え同じものを食べたとしても、時間帯を変えればカロリーオーバーになりにくく、腸内環境にも良い効果があることがわかりました。ハンバーガーや動物性の肉を食べるなら、昼がおすすめです。
——なぜ、夜ではなく昼なのでしょうか?
内藤:動物性脂肪が腸管に入ると、体内時計の遺伝子が活性化されるからです。朝や昼に動物性脂肪を食べると、体内時計のリズムを整えることができます。しかし夜遅くに食べると、リズムが狂ってしまうのです。
今まで「栄養学」と言うとカロリー計算が中心でしたが、今後は何をいつ食べるのかが重要視されるようになるかもしれません。また、私たち人間の健康だけではなく、地球の健康についても考慮しながら食べ物を選ぶ時代がやってくるのではないかと、私は考えています。
——SDGsの考え方ですね。
内藤:人間だけではなく、地球や植物や動物、みんなが健康になるような世の中を目指すというのが、最近の流れでもあります。「共生」を考えて食べ物を選んだ結果、腸内環境が良くなり、結果として健康長寿を達成できたらと思っています。薬で健康長寿を目指すこともできますが、食事を変えたほうがナチュラルでいいのではないか、というのが私の個人的な見解です。