「お弁当一つに添加物が200種類も」 添加物を避けるための調味料の商品名をプロが解説
ソース: デイリー新潮 / 画像: - /著者: 中戸川 貢
食欲の秋に、美味に舌鼓を打つ。だが、そのおいしさは果たして“本物の味”といえるだろうか……。食品添加物によって人工的に作られた味は、健康被害のリスクを伴う。それを避けるには、食の基本である調味料に気を使うべし。プロが薦める商品の実名を紹介。【中戸川 貢/加工食品ジャーナリスト】
何よりもコストパフォーマンスが大事である。安さこそが正義なのだ。コスパ、コスパ、コスパ……。
安価であることが至上の価値であるかのような風潮が広まっている現在、とりわけ食生活においてその傾向は顕著になってきているように感じます。
あたかもガソリン切れの車に給油するかのごとく、とりあえず腹を満たすという目的のために安い食品を買う。空腹感を解消するのに高いお金を払う必要などない。それは無駄な行為なのだから。
こうした「コスパ絶対主義」の前では、少々値段が高くても高栄養の商品のほうがいいのではないか、多少お金を払ってでも食品添加物が少ないもののほうを選ぶべきではないか、といった意見は吹き飛ばされてしまいます。
コスパより大事なミネラル
しかし、人間の体は機械ではありません。お腹が空いたから何でも構わないので胃に入れておけばいいという発想は極めて貧相だと思います。
私たちの肉体を作るのは食べ物以外の何物でもない以上、旬の味を楽しみながら栄養に気を使うのは当然のことではないでしょうか。コスパ重視で貧しい食事をしていれば、いずれ体を壊し、医療費がかさむなどして結局は高くついてしまうはずです
そこで私が重視しているのがミネラルです。どれだけミネラルを適切に摂取でき、その摂取したミネラルを体内で上手に使うか。コスパよりも大事なのはミネラルパフォーマンス、「ミネパ」だと思うのです。
〈こう提唱するのは、加工食品ジャーナリストの中戸川貢氏だ。
食品機械メーカーや醤油メーカー等の勤務を経て、NPO法人「食品と暮らしの安全基金」で添加物や栄養成分などの調査を行ってきた中戸川氏は、これまでの集大成と言うべき著書『ワースト添加物 これだけは避けたい人気食品の見分け方』を今年出版した。
「食品の良し悪しを見極めるプロ」である中戸川氏が、まずは改めて添加物について説明する。〉
コンビニ弁当一つに150~200種類もの添加物
添加物を摂取することの弊害として、発がん性やアレルギー性、遺伝毒性などが指摘されていることは広く知られていると思います。実際、コンビニ弁当一つに150~200種類もの添加物が使用されていると聞くとゾッとするのではないでしょうか。
欧米では「明らかに安全」な添加物でないと食品に使用できないのに対し、日本では「明らかに危険」でないと使用が禁じられません。このことからも、日本で生活する私たちがいかに「添加物リスク」にさらされているかが分かると思います。無添加食品だけを食べて生活したいと願う人がいるのも当然です。
できることならば添加物は避けたい。けれども、手作り料理で全ての食事を賄(まかな)うのは時間的にも経済的にも無理がある――。これが多くの人の現実でしょう。
他方で、国が認可した添加物を常識的な範囲で摂取しているだけであれば、人体に大きな影響を及ぼすものではないとも私は考えています。
従って、加工食品に囲まれている現代においては、可能な範囲で添加物を避けつつも、多少は添加物を取る前提で食生活を工夫し、いかにして食品から適切な栄養を取って健康な肉体を作り、そして保つかが重要になってくるのです。
三大栄養素+α
栄養の面から考えて何よりも大事なのは、三大栄養素をしっかり取ることであるのは言うまでもありません。たんぱく質、脂質、炭水化物。人体を構成し、エネルギー源となるこの三つを適切に摂取できていなければ話は始まりません。
とりわけ近年は、例えばたんぱく質の摂取量が足りず筋肉不足等に陥るなど、カロリーは十分に摂取できているのに栄養が不足し、著しく健康を損なってしまう新型栄養失調の問題点が指摘されています。たんぱく質不足は高齢者や過度なダイエットに励んでいる女性がリスクが高いといわれていますが、添加物をうんぬん言う前に、とにかくたんぱく質をしっかり摂らなければ、健康な肉体など手に入れられるはずがありません。
従って、三大栄養素をちゃんと取る。このことを大前提とした上で、健康な食生活を送るにあたって大切なのがミネラルです。三大栄養素にミネラルとビタミンを加えて五大栄養素と呼ぶように、主に代謝を正常に維持する役割を果たすミネラルとビタミンは、私たちが生きていく上で欠かせない栄養素です。
そして、ごく簡単に説明すると、ミネラルを十分に摂取する食生活を送れていれば、自ずとビタミンも相応の量を取れることなどから、分かりやすくミネラル摂取が重要だと私は説いているのです。
第一、第二の健康被害
ミネラルが不足すると、イライラしやすくなったり、うつっぽくなったりするほかに、低体温、貧血、肌荒れ、免疫力の低下など、さまざまな健康被害が生じてしまいます。これを「第一の健康被害」と呼ぶことにします。
一方、ミネラルは体内に摂取した添加物を体外に排出・分解する役割も果たしています。そのため、せっかく頑張って食品を通じてミネラルを体に取り込んでも、添加物を多く含む食品を食べてしまっては、添加物排出・分解のためにミネラルが使われてしまい、栄養として十分に生かすことができません。これを「第二の健康被害」とします。
つまり「第一・第二の健康被害」を避けるためには、ミネラルを十分に摂取しつつ、可能な限り添加物入り食品を遠ざける食生活を送るのが正解ということになるわけです。
添加物入り調味料が生む悪循環
この「正しい食生活」を過ごす入り口として、私は調味料を吟味することの大切さを訴えています。
スーパーやコンビニの棚には、何種類もの専用たれや合わせ調味料が並んでいますが、他の食品同様、実は調味料にも、うま味調味料や人工甘味料等々の添加物が使用されています。
なぜ調味料にも添加物が使われているのでしょうか。それは何よりも“おいしさ”を引き立たせるためです。
確かに添加物を使用した調味料は“おいしい”。しかし、これは食材本来の味ではなく人工的に作られたものです。端的に言うと濃いからおいしいと感じ、その濃い味に私たちの舌は慣らされてしまいます。調味料によって人工的な濃い味付けが当たり前になってしまうと、他の食品でも添加物入りの味付けを求め、それに慣れていってしまうという悪循環に陥るリスクがあるのです。
また、添加物入りの調味料を摂取すると、当然ながら先の「第二の健康被害」のリスクを抱えることになります。
さらに、例えばそうめんのつゆを考えると、添加物使用の合わせ調味料を買ってくれば、そのままで“おいしく”食べられます。一方、無添加を意識すると、醤油だけにそうめんをつけて食べるわけにはいかないので、必然的に煮干しやかつお節、昆布からだしをとって醤油と合わせることになります。
そして、手間はかかりますが、煮干しなどからだしをとることによって、ミネラルがだしに溶け出てきます。そのため、添加物の少ない調味料を使うことは「第一の健康被害」のリスクを遠ざけることにもつながるわけです。
つまり、添加物の多い調味料を使うことは、手作りのだしから豊かなミネラルを摂取する機会を奪ってしまう上に、その添加物の排出・分解のためにミネラルを消費してしまうという意味で「ダブルパンチ」といえるのです。
みそと醤油の選び方
それでは、私たちはどんな調味料を買えばいいのでしょうか。ここからは、具体的な商品名を挙げていきたいと思います(商品名等は今年春時点の調査に基づいたもの)。
まずはみそ。
例えば最大手のマルコメの商品の中でも違いがあり、添加物入りのものもあれば、「料亭の味 無添加生」や「料亭の味 無添加生 減塩」は文字通り無添加です。同じメーカーのものでも気を付けたいところです。
続いては塩。
塩選びの一つのポイントは、塩化ナトリウムの純度の低さです。この純度が高いと、血圧が上がりすぎるリスクに加え、さまざまな種類があるミネラルの中で、塩化ナトリウム以外のミネラルが十分に取れない可能性があります。そうした観点から言うと、安価なものでも「伯方の塩」(伯方塩業)や「赤穂の天塩」(天塩)は、塩化ナトリウム以外のミネラルをほどよく含んでいるのでいい塩といえるでしょう。
次は醤油。
一般的なこいくち醤油よりも甘口醤油のほうが添加物が多く含まれている傾向にあるのですが、甘口醤油が好きな人であれば「あまくち」(キッコーマン)は添加物が少なく、さらに「自然派 あまくち」(ミツル醤油)は無添加です。
純米酢と本みりん
酢はどうでしょうか。
リンゴ酢やワインビネガーなどさまざまな種類の酢がある中、日本人のソウルフードである米を使った米酢に関して言うと、醸造アルコールを使わず、米と水だけで作られた純米酢がお薦めです。例えば国産米100%の「純米酢金封」(ミツカン)が挙げられます。
みりんは、「みりんタイプ」や「みりん風」といった“みりんに似たもの”ではなく、「本みりん」がいいでしょう。中でも、伝統的製法のものがお薦めです。高級スーパーや通販でないと買えない商品も少なくないのですが、身近なところで言うと、大手スーパーのオーガニックコーナーには「タカラ有機本みりん」(宝酒造)を置いているところもあります。
砂糖は…
砂糖に関しては、残念ながら私がお薦めできるものはありません。
そもそも上白糖やグラニュー糖はほとんどミネラルを含みません。
かといって、今年7月にWHO(世界保健機関)が発がん性の可能性があるとの見解を示したアスパルテームをはじめとする人工甘味料も、もちろん推奨できない。ミネラル含有量の点からは黒砂糖がいいのですが、料理には適さないでしょうから、普段使いとしては、上白糖と似ていてミネラルをほどよく含む茶色い砂糖である粗糖がいいのではないでしょうか。
なお人工甘味料は、私がまず取らないようにしている添加物の筆頭です。
以上、ここまで主だった調味料について説明してきましたが、私がお薦めしている調味料は概して他の商品と比べると高価といえるでしょう。
しかし仮に1瓶500円の醤油と千円の醤油があったとして、料理で使う量を考えた場合、1回の料理当たりの差は数円、あるいはそれ以下になるのではないでしょうか。コスパ、コスパと言いますが、その程度の差に過ぎないのです。
コスパの話を続けると、それこそ生活必需品にはどうしたってコストを掛ける必要があります。では、現代生活の必需品とは何でしょうか。その筆頭はスマートフォンといえるかもしれません。
「食べ物こそが生活必需品」という意識の欠如
でも、よく考えてほしいのです。人間は、スマホで音楽を聴かなくても、YouTubeを観なくても生きていけます。しかし、食べなければ生きていくことはできません。つまり、昔もいまも生活必需品の筆頭は食べ物で変わらないはずなのです。
にもかかわらず、忙し過ぎるせいなのか、いつでも簡単にコンビニなどで食品を買えるようになったからなのか、いつの間にか「食べ物こそが生活必需品である」という意識が薄れているような気がしてなりません。だからこそ、コスパばかり意識して、安いけれど添加物塗れだったり、栄養価が低かったりする食事で腹を満たして済ませている。
コスパを優先して健康を害するリスクを抱えるよりも、ミネパを重視して健康に生きる。これこそが、最終的にコスパ最悪の「早死に」を避ける道だと私は思うのです。そしてまさに、味覚の秋は食生活を見直す絶好の機会なのではないでしょうか。
中戸川 貢(なかとがわみつぐ)
加工食品ジャーナリスト。1969年生まれ。食品機械メーカー、清酒メーカー、お餅メーカー、醤油メーカー勤務を経て加工食品ジャーナリストに。一般社団法人「ナチュラル&ミネラル食品アドバイザー協会」の代表理事も務める。著書に『ワースト添加物 これだけは避けたい人気食品の見分け方』がある。
週刊新潮 2023年10月19日号掲載
特別読物「味覚の秋に“食品選びのプロ”が厳選 『添加物』を避けるための『調味料』の商品実名」より