「超加工食品」の食べ過ぎで認知症リスクが上昇 健康的な食品に置き換えるとリスクは減少

ソース: Diabetes Net / 画像: - / 著者: -

 高カロリーの清涼飲料やポテトチップス、菓子パンなどの超加工食品を食べ過ぎている人は、認知症を発症するリスクが高いという、7万人超を対象とした調査結果を、米国神経学会(AAN)が発表した。

 超加工食品の毎日の摂取量が10%増加するごとに、認知症のリスクは25%高くなるという。

 超加工食品の10%を、新鮮な野菜・豆類・大豆・乳製品・果物などの、健康的な食品に置き換えると、認知症リスクは低下することも明らかになった。

 糖尿病の人は、健康的な食事スタイルにより、糖尿病を改善できるのに加え、認知症も予防できる可能性がある。

超加工食品の多くは高カロリー

 高カロリーの清涼飲料やポテトチップス、菓子パンなどの超加工食品を食べ過ぎている人は、あまり食べない人に比べて、認知症を発症するリスクが高いという研究を、米国神経学会(AAN)が発表した。

 超加工食品を、未加工であるか、最小限に加工された食品に置き換えると、認知症のリスクは低下する可能性があるという。

 米国糖尿病学会(ADA)によると、超加工食品とは「糖分や塩分、脂肪を多く含む加工済みの食品。硬化油・添加糖・香味料・乳化剤・保存料など添加物を加え、工業的な過程を経て作られる、常温で保存できたり、日持ちを良くしてある食品」のことだ。

 超加工食品は、▼ポテトチップスなどのスナック菓子、▼菓子パン・総菜パン、▼カップ麺、▼ピザ・ホットドッグ、▼ケーキ・クッキー・ビスケット・パイ、▼ミルクシェイク・カスタード、▼ドーナツ・マフィン、▼アイスクリーム、▼ミートボール・チキンナゲット、▼清涼飲料や炭酸飲料――などがある。

 超加工食品の多くは高カロリーで、脂肪と塩分が多く含まれ、良質なタンパク質や食物繊維は少ない。超加工食品の過剰摂取により、高血圧・糖尿病・肥満などのリスクが上昇するという研究も発表されている。

 糖尿病の人は、血糖管理がうまくいっておらず、高血糖が続いていると、認知症になりやすいことが知られている。糖尿病の人はアルツハイマー型認知症の発症リスクが、糖尿病でない人に比べ、1.5倍高いという報告がある。

 健康的な食事スタイルにより、糖尿病を改善できるのに加え、認知症も予防できる可能性がある。

超加工食品量が10%増えると、認知症リスクは25%上昇

 「超加工食品は便利で、おいしいと感じる人は多いのですが、利用し過ぎると食事の質が低下します」と、中国の天津医科大学公衆衛生学部のホイピン リ氏は言う。

 「超加工食品の多くは栄養価が低く、高カロリーです。食べ過ぎると、高血圧・糖尿病・脂質異常症・肥満などの慢性疾患のリスクが上昇することと関連していると考えられます」としている。

 研究グループは、英国に住む約50万人の健康情報を含む大規模なデータベースである英国バイオバンクの参加者から7万2,083人を特定した。参加者は55歳以上で、研究開始時に認知症を発症していなかった。

 平均10年間の追跡期間に、518人が認知症と診断された。287人がアルツハイマー病を発症し、119人が血管性認知症を発症した。

 解析した結果、超加工食品をもっとも多く食べていたグループでは、もっとも少なかったグループに比べ、認知症の発症率が25%高く、アルツハイマー病は14%、血管性認知症28%、それぞれ発症率が高かった。

 超加工食品の毎日の摂取量が10%増加するごとに、認知症のリスクは25%高くなることが明らかになった。

健康的な食品に置き換えると認知症リスクは19%低下

 さらに、超加工食品の10%を、新鮮な野菜・豆類・牛乳・肉・果物などの、未加工または最小限の加工をしている食品に置き換えた場合は、認知症リスクは19%低下することも示された。

 超加工食品の10%を、健康的な食品に置き換えるためには、そうした食品を1日だけ50g増やせば良いという。たとえば、リンゴ1/2個、トウモロコシ1個、食物繊維の多いふすまシリアル1杯を食べるとこの量に相当する。

 同時に、1日に食べる超加工食品の量を50g減らすと良い。チョコレートバーやポテトチップス、フライドポテトなどを食べるのをなるべく控えれば、超加工食品を減らせる。こうした簡単に工夫により、認知症リスクを3%減少できるという。

 「今回の研究では、小さくて取り組みやすい食事スタイルの変化が、認知症のリスクに違いをもたらす可能性があることが示されたのは、大変に心強いといえます」と、リ氏は言う。

 超加工食品に含まれる食品添加物や、食品に直接ふれる包装材、さらには加熱中に生成される分子などが、思考や記憶能力に悪影響を与えている可能性も考えられるという。

加工食品の栄養表示を見ることが大切

 「健康志向の高まりを受け、健康的であることを謳った加工食品も増えています。たとえば缶詰の野菜スープのような製品は、外見では何が原料として使われ、どのような加工がされているのかは分かりません。必ず栄養表示を見ることが勧められます」と、研究の論説を執筆した米国のボストン大学の健康栄養科学部のモーラ ウォーカー氏は言う。

 「健康的とされる植物ベースの食材を使ったハンバーガーやサンドイッチも、超加工食品である可能性があります。消費者も健康的な食品を見分けられるよう賢くなる必要があります。また、複雑化している食品産業をより良く理解するために、より質の高い食事評価の方法が求められています」としている。

 研究では、参加者は前日に何を食べたり飲んだかについて、2回以上の食事アンケートに回答した。研究グループは、1日あたりのg数を計算し、それを他の食品の1日あたりのg数と比較して、毎日の食事の割合を作成することで、参加者が超加工食品をどれだけ食べたかを調査した。

 次に、参加者を、超加工食品の摂取率がもっとも低いグループからもっとも高いグループまで、4つに振り分けた。超加工食品は摂取率がもっとも低いグループでは、超加工食品を毎日の食事の9%、1日あたり平均225g食べていた。もっとも多い超加工食品は飲料で、糖質の含まれる食品や超加工乳が多かった。

Eating More Ultra-Processed Foods Associated With Increased Risk Of Dementia (米国神経学会 2022年7月27日)
Association of Ultraprocessed Food Consumption With Risk of Dementia A Prospective Cohort (Neurology 2022年7月27日)