「超加工食品」でうつ病リスク増加か 特に人工甘味料で高い関連性

ソース: Forbes Japan / 画像: Shutterstock.com /著者: Robert Hart | Forbes Staff

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高度に加工された「超加工食品」を食べると、うつ病を発症するリスクが高まる可能性があるとする研究論文が20日、学術誌JAMA Network Openで発表された。特に人工甘味料はうつ病との関連性が高かったという。

食品のほとんどはある程度加工されているが、スナックや冷凍食品などの「超加工食品」には通常、分離タンパク質や水素添加油脂、高果糖コーンシロップ、合成添加物など、家庭で調理した食事にはほとんど使われない成分が含まれており、肥満、がん、糖尿病など多くの健康問題と関連していることがこれまでにも指摘されていた。

研究チームは、約3万2000人の中年女性を対象に、2003~17年の期間で4年ごとにアンケートを実施し、その食生活を評価。超加工食品の摂取量に応じて5つのグループに分けた。

うつ病の定義としては、医師による診断と抗うつ薬常用の両方があることを条件とする狭い定義と、医師の診断あるいは抗うつ薬の使用のいずれかがあることを条件とする広い定義の2通りを使用。うつ病リスク要因となる身体活動、飲酒、喫煙、他の健康問題、年齢などを考慮した上で、食事とうつ病発症リスクとの関連性を調べた。


狭義のうつ病発症例は2122件で、超加工食品の摂取量が最も多かった20%の人々(1日9食分以上)では、もっとも少ない20%の人々(1日4食分以下)に比べてうつ病のリスクが49%高かった。広義のうつ病だと、この差は34%だった。

超加工食品の種別に見ると、人工甘味料や人工甘味料入り飲料との関連性が特に高く、摂取量が最多のグループは最少のグループに比べてうつ病のリスクがそれぞれ26%、37%高かった。

論文執筆者の1人である米ハーバード大学医学大学院のアンドリュー・チャン教授はフォーブスの取材に対し、特にメンタルヘルスの問題がある人は「超加工食品の摂取を可能な限り減らした方がよいかもしれない」と説明した。

うつ病は複雑な病気であり、社会的、生物学的、心理的要因が絡み合っていることが、これまでの研究で示されている。具体的な要因としては、遺伝や、人生における大きな出来事や経験、運動、飲酒、薬物使用、睡眠時間、他の健康問題などがある。

食生活も、うつ病発症リスクに大きく影響すると考えられている。だがチャン教授は、食生活のどの部分がうつ病に関連しているのかを具体的に示したデータはほとんどなく「メンタルヘルスの要因の多くは個人差が大きいことから、食生活の重要性を他の要因と比較して評価するのは難しい」と説明。それでも、今回の研究結果によって「メンタルヘルスに影響すると考えられる他の一般的な要因と同じくらい食生活が重要である」ことが改めて示されたと指摘している。

ただ研究チームは、今回の研究の不足部分として、対象とした人に多様性が不足していたことを認めている。大多数は白人女性で、研究開始時の年齢は42~62歳だった。チャン教授は「より多様な集団」を対象とした追加研究が必要だと述べている。またこの研究は、うつ病と超加工食品との関連性のみを調べたものであり、関連性が生じている理由については分析していない。


チャン教授はこの点について、腸内フローラ(細菌叢)が何らかの役割を果たしているとみている。最近の研究では、腸内に生息する無数の細菌が肥満や糖尿病、アレルギー、炎症性腸疾患、認知機能障害など、さまざまな疾患と関連していることがわかっており、糞便移植などで腸内フローラを変化させる新たな治療法が確立されてきている。「食生活が腸内フローラの変化と関連していることと、腸内フローラがうつ病に関与していることがわかっているため、私たちはこの2つを結びつける研究に取り組んでいる」とチャン教授は語った。

チャン教授によると、ある要因がうつ病のリスクに影響を及ぼすかどうかを特定するのは難しい。特定の食生活がうつ病に影響を及ぼすのではなく、うつ病の人が特定の食生活をする傾向があるだけかもしれない。これは「典型的な『鶏が先か卵が先か』の問題」であり、今回の研究ではこれらの要因を考慮することで、食生活がうつ病発症の要因であることを特定しようと試みたとチャン教授は語った。

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