超加工食品でコロナのリスクが上昇

ソース: Yomidr / 画像: Adob​​e Stock / 著者: 比企野綾子

 中国・Tianjin Medical UniversityのLihui Zhou氏らは、前向きコホート研究の参加者約4万1,000例を対象に、口当たりや日持ちを良くするため食品添加物が多く、加工度合いが高いと分類される「超加工食品(UPF)」の摂取と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患リスクとの関連を検討した。その結果、UPFの摂取量とCOVID-19罹患リスクとの間に有意な正相関が認められ、その関連にはBMIの関与が示唆されたとEur J Nutr( 2022年8月16日オンライン版 )に報告した。

1日の摂取総重量に占めるUPFの割合で4群に分類

 栄養は、免疫システムの働きを助け、感染リスクを軽減する上で重要な役割を果たす。しかし、食事とCOVID-19罹患リスクとの関連を検討した先行研究は限られる。そこでZhou氏らは、UPFの摂取量とCOVID-19罹患リスクとの関連を検討した。

 対象は、前向きコホートUK Biobank研究の参加者で、1日の食事調査を5回のうち少なくとも2回受けた4万1,012例(男性1万8,101例、女性2万2,911例、2020年時点の平均年齢56.47歳)。

 1日の食事内容は、オンラインで24時間思い出し法による栄養調査で収集した。食品はNOVA分類により、加工の程度に応じて〈1〉未加工またはほとんど加工していない食品、〈2〉加工のための食材(油、バター、砂糖、塩など)、〈3〉加工食品(〈1〉と〈2〉を用いて加工されたパンやチーズなど)、〈4〉UPF(工業用に加工された食品で、UPFにしか使われない蛋白加水分解物、水素添加油脂などを含む。炭酸飲料、スナック菓子、インスタント食品など)―に分けた。

 対象を1日に摂取した総重量に占めるUPF摂取重量の割合(UPF割合)で4群に分け、第1四分位群に対する第2、第3、第4四分位群のCOVID-19罹患リスクを算出した。

 COVID-19罹患は、SARS-CoV-2検査の陽性例またはCOVID-19による死亡例とした。

リスクはUPF割合が約30%までは急上昇、その後横ばいに

 集計の結果、平均UPF摂取量は1,721.50g〔四分位範囲(IQR)822.50~1,621.54g〕、UPF割合は26.58%(同19.98~34.19%)だった。UPFの内訳は、飲料(26.86%)が最多で、乳製品(20.25%)、超加工パンおよびペストリー(19.42%)、インスタント食品(12.75%)が続いた。

 6,358例(15.5%)がCOVID-19罹患と診断された。

 さまざまな交絡因子を調整後にロジスティック回帰分析を行ったところ、第1四分位群に比べ第2、第3、第4四分位群ではいずれもCOVID-19罹患リスクが高かった〔第2四分位群:オッズ比(OR)1.03、95%CI 0.94~1.13、第3四分位群:同1.24、1.13~1.36、第4四分位群:同1.22、1.12~1.34、傾向のP<0.001〕。

 交絡因子を調整後に制限付き三次スプラインを用いて解析したところ、UPF割合とCOVID-19罹患リスクとの間に非線形の関連が認められ、COVID-19罹患リスクはUPF割合(予測)が約30%までは急速に上昇し、その後は横ばいになることが示唆された。

 感度解析では、UPF割合とCOVID-19罹患リスクとの関連は維持されていた。

UPF割合とCOVID-19罹患リスクとの関連にBMIが有意に寄与

 サブグループ解析を行ったところ、UPF割合と年齢層、教育レベル、BMI、併存疾患の有無との間に有意な交互作用は認められず(交互作用のP=0.081~0.995)、いずれのサブグループにおいてもUPF割合とCOVID-19罹患リスクとの関連に影響はなかった。

 媒介分析では、UPF割合とCOVID-19罹患リスクとの関連にBMIが13.2%有意に寄与することが示された(95%CI 8.0~23.5%、P<0.001)。Zhou氏らは「過去の研究から、UPF摂取量が多いほどBMIが上昇し、肥満リスクが高まることが示唆されている。また、肥満は感染症リスクを高めることが示されており、そのメカニズムとしてリンパ球の活性低下や抗体およびインターフェロンγの産生低下が示唆されているが、解明にはさらなる研究が必要だ」と考察。

 以上を踏まえ、同氏らは「UPFの摂取量が多いほど、COVID-19の罹患リスクが有意に高まることが示され、その関連にはUPF摂取によるBMIの上昇が一部関与していることが示唆された」と結論。さらに「COVID-19感染拡大による疾病負荷の軽減には、栄養と代謝を改善するための介入が重要だ」と付言している。(比企野綾子)