気候変動対策、2024年に注目すべき点は?
ソース: Business Insider / 画像: Getty Images /著者: Catherine Boudreau [原文] (翻訳:仲田文子、編集:井上俊彦)
気候変動対策における2024年の注目点について、複数の専門家に話を聞いた。
AIの導入により製造業、農業、電力分野における温室効果ガス排出量が削減される可能性がある。
金利が上昇しても、グリーン転換の妨げにはならないだろう。
2023年は気候変動対策にとって変革の年となった。
AIはかつてないほど我々の集合意識に浸透してきた。世界的に再生可能エネルギーの生産能力が向上し、EV(電気自動車)販売台数が新記録を達成した。しかし、異常気象は経済の脱炭素化が十分に進んでいないことを思い起こさせるものだった。
Business Insiderは複数の専門家に2024年の展望について聞いた。その要点を紹介しよう。
2024年もAIの導入が進む
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)では、多くのサイドイベントで初めてAIが焦点となった。人工衛星、ドローン、陸上センサーからの膨大なデータを分析し、温室効果ガスの排出量を監視するために、すでにAIは使われている。また、異常気象をより正確に予測するためにも、AIが使われている。
AIの導入によって2030年までに温室効果ガスの排出量を5%から10%削減できる可能性があることが、グーグル(Google)とボストン・コンサルティング・グループ(Boston Consulting Group)による11月の報告書で明らかになった。この削減は製造業、農業、電力分野からもたらされる可能性があるが、これらの業界におけるAIの導入は進んでいないと製造業向けに機械学習ソフトウェアを開発するFero Labsの共同設立者でチーフサイエンティストのアルプ・ククケルビル(Alp Kucukelbir)が述べている。ククケルビルが他の学者と作成したAI気候フレームワークは、導入の機会、リスク、障壁について概説したもので、COP28で発表された。
「現在稼働している工場は、すでにAIを導入できるほどデジタル化されており、リサイクル材料の使用量の改善、廃棄物やエネルギー消費量の削減、生産歩留まりを向上させることができる」とククケルビルは言う。
彼は、政府がAIにどのようにアプローチし、潜在的な利益と教育格差をカバーするのか注視している。AIの知識を持つ労働者はまだ十分でないが、それは政府が解決に向けて取り組むことができる問題だ。アメリカエネルギー省は2023年12月、AIやその他の新興テクノロジーを専門に扱う新たなオフィスの開設を発表したとククケルビルは指摘した。
コスト上昇もグリーン転換の妨げにはならない
再生可能エネルギーへの投資は2023年に記録的な水準に達したが、金利が高くなったことで洋上風力発電プロジェクトは暗礁に乗り上げた。デンマークの電力会社、オーステッド(Ørsted)はアメリカのニュージャージー州沖に2つの大型洋上風力発電施設を建設するプロジェクトを計画していたが、11月に中止した。しかし12月20日、イギリスが風力産業への財政支援を強化したことを受け、オーステッドは北海に世界最大の風力発電所を建設する計画を進めることを発表したとフィナンシャル・タイムズが伝えている。
カリフォルニア大学バークレー校の教授で、エネルギーと環境を研究するエコノミストであるジェームス・サリー(James Sallee)によると、洋上風力発電産業はアメリカではまだ新しい産業であるため、よりコストがかかり、リスクが高いと指摘した。借り入れコストが高いこともそれを悪化させている。それでもサリーは、金利上昇がグリーン転換の妨げになるとは考えていない。
「標準的な太陽光発電と風力発電のプロジェクトには大きな勢いがある。天然資源が豊富な場所では、今でも最も安価な新電力源であり、よい状態を保つだろう。しかし、大規模な洋上風力発電のような辺境でのプロジェクトは、中止される危険性がある」
よいニュースとして、インフレが冷え込んでおり、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)が20204年に5回程度の利下げを実施する可能性が出てきたことが挙げられる。
暑い日は続く
2023年は記録的な高温となった。気候科学者は、2024年も猛暑になると予測している。気候危機は、気温上昇をもたらすエルニーニョ現象と相まって、災害のリスクが高まっている。Business Insiderは今後も、こうした気象災害がいかに人々の生活の場を変え、保険や農業などの産業を混乱させているのか取材していく。