欧州や米国で進む「生ごみ堆肥化」、仏は今年から義務化

ソース: alterna / 画像: -/著者: 北村(宮子)佳代子

記事のポイント

  1. 欧州や米国の一部地域で、生ごみの堆肥化が進んでいる

  2. フランスでは今年1月から、全国民に生ごみの分別・堆肥化を義務づけた

  3. 米国ではカリフォルニア州に続き、ニューヨーク市でも義務化される

欧州や米国の一部の地域で、生ごみのコンポスト(堆肥)化を促す規制が広がってきた。フランスは2024年1月1日、すべての国民に生ごみや落ち葉・草木などの有機廃棄物のリサイクルを義務化した。米国では、先行するカリフォルニア州などに続き、ニューヨーク市も今年秋までに全市内で生ごみの分別が義務づけられ、コンポスト化を図っていく。(オルタナ副編集長=北村佳代子)

フランスでは今年1月から生ごみの堆肥化が義務づけられた

■フランスは今年から生ごみ堆肥化が義務化

フランスでは、堆肥化可能なごみが一人当たり年間推定82キログラム捨てられているという。

同国では、これまで年間5トン以上の有機廃棄物を出す事業所などの主体を対象に分別を義務付けていた。これが1月1日からは、すべてのフランス国民が、家庭や事業所から出る生ごみや落ち葉・草木などの有機廃棄物を、自治体が指定する回収場所(施設)に出すか、各自がコンポスト容器で堆肥することが求められるようになった。

回収した有機廃棄物は、微生物の働きを活用し、バイオガスや化学肥料を代替する堆肥(有機肥料)に変えられる。

今後、回収施設は増えていく見通し。また、現時点では違反しても罰金は科されないという。

■家庭ごみの3分の1は堆肥化可能な有機廃棄物

有機廃棄物は家庭ごみの約3分の1を占める。資源として回収できる有機廃棄物も、他のごみと混ざることで、埋立地や焼却炉に運ばれ、メタンや二酸化炭素といった温室効果ガスの発生につながる。

欧州のNPO、ゼロ・ウェイスト・ヨーロッパによると、2018年にEU全体で発生した有機廃棄物のうち、回収した比率は34%にとどまり、潜在的に、堆肥化可能な4000万トンの土壌養分が廃棄に回ったという。

EUは有機廃棄物の回収を奨励しているが、強制的な目標の設定には至っていない。多くの国では、有機廃棄物の分別は自治体レベルで取り組まれている。

イタリアのミラノでは、2014年から各家庭にコンポスト容器と堆肥化できる袋を配布し、生ごみを回収するプログラムを実施している。英国は2023年、家庭から出る生ごみの分別収集に向けた計画を発表した。このほかオーストリア、オランダ、ベルギーでも、自治体を主体に生ごみの分別が進んでいる。

■米国でも進む「生ごみ堆肥化」

米国で生ごみの堆肥化を最初に義務化した州は、「緑の山の州」として知られる東部のバーモント州だった。2020年7月1日に、使い捨てプラスチックの使用禁止とともに、生ごみの堆肥化を州住民に義務づけた。

2022年1月1日にはカリフォルニア州も、生ごみを埋め立てることで排出されるメタンの削減に向け、市・郡政府に有機廃棄物のリサイクル(堆肥化)を義務づけた。

同州では、有機廃棄物のリサイクル比率75%の達成を目標に掲げる。2024年からは、ルールに従わない住民に罰金も科せるようにした。

サクラメント市の2022年6月から9月にかけての初期段階評価では、有機廃棄物の重量は前年同期に比べ14%増加した一方、ごみの収集量は10%減少した。

ただ、浸透には時間がかかっている。地元メディアは、施行から1年を経ても依然、自治体は住民への「教育」の必要性を訴えていると、報じている。

■830万人が住むニューヨーク市も堆肥化へ

都市レベルでのコンポスト義務づけでは、2009年のサンフランシスコがもっとも早かった。これを皮切りにシアトルやポートランドなどでも義務化が広がった。

ニューヨーク市議会も2023年6月、家庭から出る生ごみの分別義務化を決議した。地区ごとに段階的に実施され、2024年10月のマンハッタン地区で最後となる。これにより350万世帯、830万人が住む全米最大の都市での生ごみの分別が完了する。

ニューヨーク市衛生局のジェシカ・ティッシュ局長は「何十年もの間、ニューヨーク市が口にしてきた目標が、ついに実現する」と、現地メディアに意気込みを語る。

早い段階で義務化の対象となったクイーンズ地区では、試験運用の段階で1300万ポンド(約590キログラム)の有機廃棄物が堆肥化され、ティッシュ局長は「大成功だった」と振り返る。

米ビジネスメディアのファストカンパニーによると、ニューヨーク市全体で1日に出るごみの量は2400万ポンド(約1.1トン)あり、その約3分の1が堆肥化可能だという。

罰則に関しては猶予期間を設け、マンハッタンでの導入から半年後となる2025年3月までは罰金は科されない。その後は、ルールに従わなければ警告を受け、それでも従わない場合、住居の規模に応じて25ドル(約3600円)から400ドル(約5万8000円)の罰金が科されるという。