食品安全委員会が人工甘味料のQ&A公開 「発がん性分類」の捉え方
人工甘味料のアスパルテームは、健康に影響するのか――。そんな不安の声に応えてか、内閣府食品安全委員会が人工甘味料のアスパルテームについてのQ&Aを発表しました。国際的な機関の発表で、「発がん性分類」に注目が集まりましたが、生活者はどう捉えればいいのでしょうか。委員会の見解を紹介します。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
日本での摂取量は許容量の0.3%
7月14日、人工甘味料のアスパルテームにまつわる、気になるデータが国際機関から発表されました。
そのデータとは、世界保健機関(WHO)傘下の国際がん研究機関(IARC)が「発がん性」について、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)が「実際に摂取した際の健康への影響」について、それぞれ発表したもの。
このうち、IARCの発表した「アスパルテームのヒトに対する発がん性」は、「グループ2B(ヒトに対して発がん性がある可能性がある)」に分類されることになり、世界的なニュースになりました。
一方、JECFAの発表では、「前回(1981年)評価時に設定した許容1日摂取量(ADI)=40 mg/kg体重/日を変更する理由はない」としています。
これらの結果をどう捉えればいいのでしょうか。日本の内閣府食品委員会は同19日、今回の国際的な機関の発表を受けてアスパルテームについてのQ&Aを更新し、あらためて情報を整理しました。
【参考】アスパルテームに関するQ&A - 内閣府食品安全委員会
https://www.fsc.go.jp/foodsafetyinfo_map/aspartame.html
IARCの「発がん性分類」が示しているのは「さまざまな要因(化学物質、微生物、作業環境や特定の行為など)がヒトに対する発がんの原因となり得るかどうかの根拠がどれくらいあるか」を示すもの。
したがって、「この分類は、各要因の発がん性の強さを示すものではありません」「また、各要因に現実的なレベルでばく露したときに実際にがんが発生する可能性の大きさを示すものではありません」ということです。
IARCによる発がん性分類では、グループ2B(ヒトに対して発がん性がある可能性がある)には322要因が分類され、主に「動物試験において発がん性を示す有力な根拠があるものの、ヒトにおける発がん性を示す情報がない、またはほとんどないものが該当します」と同委員会。
世界各国のアスパルテームの1日あたりの摂取量は、JECFAが検証した「許容1日摂取量(ADI)」より低くなっています。そのため、JECFAは通常の食生活で「アスパルテームの摂取によって健康への悪影響がある懸念はない」としました。
JECFAは、IARCが対象としたデータを含めて評価した結果、「ヒトに対する発がん性を含め、健康に悪影響を与えるという説得力のある根拠はなかった」としており、そのためにADIの変更の必要はないと結論づけています。
今回のニュースを受け止める上では、IARCの見解だけでなく、同時に発表されたJECFAの見解もあわせて知っておくと、理解が深まりそうです。
令和4年度(2022年度)の厚生労働科学研究「生産量統計調査を基にした食品添加物摂取量の推定に関わる研究」によれば、日本でのアスパルテームの1人あたりの1日摂取量の推計結果は「6.58mg/人/日」で、ADIに比べて0.3%と、大幅に低い結果でした。
同委員会は「今後ともIARCおよびJECFAが公表する情報を見ながら、必要があれば、本ウェブページを更新します」としていて、情報の更新には注意が必要です。とはいえ、「発がん性分類」という言葉だけに反応せず、周辺の情報にも目を通す習慣が大事だと言えます。