薬の保管法 高温多湿や直射日光はNG、市販薬を外袋から出すのも避けるべき
ソース: NEWSポストセブン / 画像: - / 著者: 女性セブン
肉や野菜、総菜にスナック菓子などの食品を購入するとき、私たちはパッケージをひっくり返して賞味期限を確認し、またそれがどこで作られたものかをチェックする。しかし薬になるとそれらを意識することなく、口の中に放り込む人が大半だ。しかし、ナビタスクリニック川崎の内科医・谷本哲也さんが言う。
「スーパーで食品を選ぶときは“賞味期限が切れていないか”“産地はどこか”と気にする半面、薬のことになると無条件に信頼し、疑問を持たずにのんでいる人がほとんどです。しかし薬は、原料を仕入れ、それを工場で加工して製造する加工食品とまったく一緒。古くなれば成分は変化し、効能は落ち、場合によっては安全性さえ不安視されます」
また、薬の産地も重要だ。たとえば中国産の薬について問題点を指摘する声がある。静岡や神奈川などを中心にポプラ薬局を展開する薬剤師の小島真さんは、中国産の薬を取り巻く最大の問題は、原材料や添加物の規制が非常にゆるいことだと指摘する。
「過去に、中国から個人輸入された未承認医薬品の“やせ薬”に、体に毒となる物質が高濃度含まれていることがありました。甲状腺機能障害や重い肝機能障害が起きて、死者も報告されているにもかかわらず、製造や原料への規制はほとんどない。こうして明るみに出るのは氷山の一角である可能性も高い」
薬の鮮度や産地を意識しなければ、効果が薄いどころか体に毒を入れる可能性すらあるということ。知らず知らずのうちに“毒薬”を口にしないため、私たちができることはあるだろうか。専門家たちが口を揃えたのは「鮮度を保つためには保存方法に気をつける」ということだ。
「基本的に、高温多湿や直射日光が当たる場所はタブー。風通しがよく、涼しい場所で保管してください。座薬やシロップなどの中には冷蔵保存が必要なものもあるので、保管方法をは必ずチェックしてください」(小島さん)
谷本さんも言う。
「特に糖尿病のインシュリンなど自己注射薬は、たんぱく質が入っているものもあり、気温の変化に敏感です。冷蔵保存など必ず保管方法に気をつけてください。変質すると効果が減少するだけでなく、副作用トラブルが起こる可能性もあるため、薬局で指示された保管方法に従うこと。明らかに患者本人の管理ミスであれば、トラブルが起きても自己責任になりかねません。
のまない市販薬を外袋から出して保存するのも避けた方がいい。日光の紫外線で変質が進みます。フタがついている製品は、使用後にしっかり閉めましょう」
薬は湿度によっても“鮮度”が落ちる。なかでも水なしでのめるOD錠は湿度で変質しやすいので注意が必要だ。国際未病ケア医学研究センター長で医師の一石英一郎さんが言う。
「皆さんが思っている以上に、薬は湿度に弱い。夏場は室内でも高温多湿になりやすいので、心配なら冷蔵庫に入れた方がいい。密閉容器に乾燥剤を入れて保存するのもいいでしょう」(一石さん)
目薬は、のみ薬よりもデリケートなことが多いので注意が必要だ。二本松眼科病院の眼科専門医・平松類さんが言う。
「直射日光は避けて、涼しい場所で保管するのが基本です。冷蔵庫でもかまいません。光に当たると変質する目薬もあるので、薬局で遮光袋をもらったときは必ず入れるようにしてください。
市販のものも、開封したら1か月以内に使い切ってほしい。特に高温にも弱いので、冷暗所に保存して、いまの時期はあまり持ち歩かないこと。目薬が手放せないという人は、職場用と自宅用を用意するといいでしょう」
しっかりと保管することと並行して取り組みたいのは、産地を調べ、安全な薬を選ぶこと。
「特に大切なのは安易に個人輸入で薬や健康食品を買わないことです。海外産だと明らかにわかるものには、手を出さないでほしい。個人輸入はもちろん、友達が海外で買ってきた漢方やサプリメントをのむ人もいるが、おすすめできません。薬の原料は食品と同じ。高麗にんじんでも高品質なものとそうでないものがあります。
見分けるのは困難なので、日本国内の信頼のおける漢方薬局で購入した方がいいでしょう」(小島さん)
かかりつけの薬局や薬剤師を持つことも、安全な薬を選ぶことにつながる。
「複数の医療機関にかかっていても、薬局は1か所にまとめた方が薬を一元管理しやすいです。のみ合わせや重複した薬の有無もチェックしやすくなります。薬局をまとめられないならば、少なくともおくすり手帳を使ってください」(小島さん)
処方薬の場合、産地を調べることもできるという。
「薬剤師に相談してみてもいいし、医薬品医療機器総合機構(PMDA)のサイトや製薬会社で情報が開示されています。中国産の原薬も品質が上がってきているし、中国産のすべてが怪しいわけではありません。それでも不安であれば、価格競争が激しくなりがちなジェネリックを避けて、なるべく先発薬を使ってもらうように医師や薬剤師に伝えることもひとつの手です」(谷本さん)
使い方次第で薬は毒になる。無駄に恐れる必要はないが、食品と同じく“鮮度”と“産地”に気を配ろう。
※女性セブン2022年8月11日号