マイクロプラスチックが血液につづき「人の心臓」から発見 人体への影響は?
ソース: Eleminist / 画像: - /著者: ELEMINIST Editor
人の心臓からマイクロプラスチックが初めて発見された。人間の血液でもすでに見つかっており、人への影響が懸念される。海洋プラスチックの問題と、人体への影響について解説する。
マイクロプラスチックとは?
マイクロプラスチックとは、5ミリ以下のサイズになったプラスチックを指す。プラスチックはとても便利な素材で、飲食品の容器、電化製品、ペットボトル、レジ袋など、私たちの身の回りのさまざまなものに使われている。
しかし、プラスチック製品が適切に処分されず、街のなかに捨てられると、それが川を通り最後には海に行き着く。プラスチックは自然分解されないため、途中で砕けたり、劣化したりしながらも、微細な粒子となって残っていく。こうして5ミリ以下の小さなサイズになったものがマイクロプラスチックなのだ。
一次的マイクロプラスチック
マイクロプラスチックは、「一次的マイクロプラスチック」と「二次的マイクロプラスチック」に分類できる。一次的マイクロプラスチックは、ペレット(プラスチックの原料)や、洗顔料、コスメ用品に使われるマイクロビーズのこと。製品として誕生したときからマイクロプラスチックだったものだ。これは、排水溝などを通じて海まで流れる。
二次的マイクロプラスチック
二次的マイクロプラスチックは、ペットボトル、食品用容器などで、もともとは大きなサイズのプラスチック製品が破損や粉砕によって小さくなったものをいう。
深刻化するマイクロプラスチックの影響
マイクロプラスチックやプラスチックごみによる海洋汚染は着実に進んでいる。現在、海に存在する海洋プラスチックごみは、およそ1億5,000万t。そこに、毎年800万tもの新たなごみが増え続けているのだ。このまま対策を行わなければ、2050年には海洋プラスチックごみが魚の重量を上回ると予測されるほどだ。ここまでプラスチックごみの量が増えると、当然ながら、さまざまな部分に影響を及ぼすと考えられる。
海洋生物への影響
クジラ、カメ、イルカ、アザラシなどの海洋生物は、海に浮かぶプラスチック製品を、タコやクラゲと誤って食べてしまうことが考えられる。消化できないプラスチックごみを体内に取り込んだ海洋生物は、満腹であると勘違いして栄養を取らずやせ細ったり、プラスチックごみで胃がいっぱいになり魚などを食べられずにいたり。実際に、体内からプラスチックごみが見つかる海洋生物が多く発見されている。
人体への影響は?
そして気になるのが、人体への影響だ。実際に多くの海洋生物がプラスチックごみを誤って口にしているということは、私たちが食べている魚も、同じようにマイクロプラスチックを取り込んでいる可能性が高い。
心臓から初めて見つかる
「Environmental Science & Technology」に2023年7月に掲載された研究で、心臓手術を受けた人の心臓から、マイクロプラスチックが検出されたことが明らかとなった。心臓手術を受けた患者15名の検体を調べたところ、5つの組織から9種類のマイクロプラスチックが見つかったのだ。その大きさは、最大で0.469mmだった。また手術後にも、9種類のマイクロプラスチックが見つかり、その大きさは最大で0.184mmに変わっていた。
血液から見つかる
マイクロプラスチックは、人間の血液からも見つかっている。2022年に発表された研究結果で、オランダの研究チームは匿名で集められた被験者の血液から、マイクロプラスチックを検出。およそ4分の3の被験者の血液から5種類のマイクロプラスチックが見つかった。
肺などの内臓・母乳・精液にも
同じように、肺などの内臓や、母乳、精液などからもマイクロプラスチックが見つかっている。すでに血液にマイクロプラスチックの存在があるということは、私たち人間の体中にもめぐっている可能性はあるということだ。
健康への影響は?私たちはこれからどうすればいい?
マイクロプラスチックの人体への影響は、まだ研究が始まったばかり。私たちがどのようにマイクロプラスチックを体内に取り込んでいるかも、まだ明らかになっていない。「恐れすぎることなく、警戒するように」と呼びかける科学者がいる一方で、人間への明らかな影響が目に見えるようになった段階では、すでに手遅れになる可能性も否定できない。
ふだんの食事や生活で知らないうちにマイクロプラスチックを摂取している可能性もあり、どう予防していけばいいのか難しいこともあるだろう。
いまの私たちにできるのは、プラスチックごみをこれ以上増やさず、川や海に流れつくごみを減らすことではないだろうか。プラスチックの使用を減らすことは、海洋ごみを減らすだけでなく、焼却処分による温室効果ガスの排出量を削減することにもつながる。小さなことからしかできないが、その一歩を始める人が一人でも増えることが、より良い未来につながると信じていきたい。
※掲載している情報は、2023年9月4日時点のものです。