日本の「プラスチックリサイクル」の闇。真のリサイクル率は?

ソース: Forbes Japan / 画像: - /著者: エシカルな暮らし 編集部

日本のプラスチックリサイクル率は86%だが…

世界のプラスチック生産量は50年間で20倍に増え、今まで作られたうちのたった9%程度しかリサイクルされていないのが現状である。

そんな中、2020年の日本のプラスチックリサイクル率は86%。

世界的に見ても高く、リサイクル先進国に思えるが、実はこの数値には裏がある。

今回は、日本のプラスチックリサイクル率が高い理由とマイクロプラスチックの問題を解説する。

リサイクルの種類

日本のプラスチックリサイクル率が高い理由を理解するためには、リサイクルの3つの種類「マテリアルリサイクル」「ケミカルリサイクル」「サーマルリサイクル」とは何かを知る必要がある。

マテリアルリサイクルとは、ゴミの形を変えてモノに生まれ変わらせる、私たちのイメージに一番近い方法である。

ケミカルリサイクルとは、廃プラスチックを化学反応で別の成分にしてから、もう一度製品として作り変える方法である。

サーマルリサイクルとは、プラスチックを焼却したときに排出される熱を再利用する方法である。

62%が燃やされている

実は日本の86%のプラスチックのリサイクル率のうち、なんと62%がサーマルリサイクルである。

日本では「サーマルリサイクル」がリサイクルの1つとして定義されているが、感覚的にリサイクルではないと感じる人が多いのではないだろうか。

実際、海外では「サーマルリサイクル」という言葉はなく、ゴミを燃やしてエネルギーにする方法は「エネルギー回収」や「熱回収」と呼ばれており、リサイクルとは定義されていない。

サーマルリサイクル以外が増えない理由

サーマルリサイクルはエネルギーの削減につながるが、CO2が排出されることに加え、有害物質の発生や毒性のある鉛、水銀が生成されてしまうといったデメリットがある。

一方で、ほかのリサイクルは循環に大きなコストがかかり、品質の担保も難しいため、普及が進んでいない。

2015年の日本のマテリアルリサイクルの割合は19.6%だったが、2020年は21.8%と2%ほどしか増えていないのだ。

マテリアルリサイクルにも裏が

実は、マテリアルリサイクルの割合には、海外に輸出したプラスチックの割合も含まれている。

2018年に中国が廃プラスチックの輸入を禁止したこともあり、東・東南アジアの国がリサイクルする予定で受け入れたゴミを処理しきれず、その一部が海に流れ出てしまっている。

プラスチックリサイクル率86%のうち、62%は燃やされ、10%は処理方法が不透明な海外に輸出されていることを考えると、真のリサイクル率は20%もないかもしれない。

海洋プラスチック問題

環境省の報告書によると、海洋プラスチック発生量の1〜4位が東・東南アジアの国となっている。

海を漂うプラスチックが波や紫外線などの影響で細かく砕け、魚がエサと間違えて口にし、その魚を私たちが食べることでマイクロプラスチックが人体に入り込む。

人体へのハッキリした影響は明らかになっていないが、細胞が損傷したり、プラスチックに吸着された有害な添加物が入り込んだりするリスクが懸念されている。

行政・企業のプラスチック問題の対策

行政・企業は、プラスチック問題の解決に向けて、次のような対策に取り組んでいる。

・生分解性プラスチックの開発
生分解性プラスチックとは、自然に還るプラスチックのことを指す。一般的なプラスチックよりも環境負荷は少ないが、現状は特定の環境でのみ分解されるものが多く、海洋環境で分解されるものはほとんど普及していない。

・海洋ごみの回収
香川県では、漁業者と市町、県が協力し、海底ごみの回収を行っている。

・マイクロプラスチックの自動計測手法
海洋研究開発機構は、マイクロプラスチックを半自動で検出する方法を開発している。

私たちにできること

私たちにできることは、日常生活で排出するプラスチックごみを可能な限り減らしていくこと。

「日本のプラスチックリサイクル率が高いから」と安心するのではなく、リサイクル率の真実を知り、脱プラスチックを進めていかなければならない。

また、リサイクル率のカラクリを多くの人に伝えるのも大切である。まずは「知る」ことが問題解決の第一歩となるだろう。

【参考】
・環境のミカタ 
https://kankyounomikata.co.jp/corporate/business/service/column/plastic-recycle-problem/
・Forbes 
https://forbesjapan.com/articles/detail/24796/page2
・三菱総合研究所 
https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20190408.html
・環境省 
https://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-03/y031203-s1r.pdf
・プラスチックのはてな 
https://www.pwmi.jp/plastics-recycle20091119/future4/
・グリンピースジャパン 
https://www.greenpeace.org/static/planet4-japan-stateless/2020/08/242c8c71-20200826_recycling-myth-2.0-.pdf
・千葉商科大学 
https://www.cuc.ac.jp/om_miraitimes/column/u0h4tu00000013vf.html